2016年7月22日金曜日

新作原画『新たなる時を刻む』

 
 
東京・横浜は昨日から気温がグッと下がり、
雨が降っている。
梅雨明けはもう少し先のことらしい。
 
暑さに少しやられていたので、私のとっては好都合。
こんな時はアトリエに籠もって、新作の原画を起こすことにした。
 
次なる新作のテーマは『結婚』
 
長女の婚約が整い、秋の結婚式に向け、今、にわかに慌ただしさが増している。
決まるときは決まる。
決まれば早いというのは、自分の時も含め、分かってはいたが、
それにしてもやっぱり、あれよあれよという感じ。
 
33年と30年、それぞれ全く別の人生を歩んできたふたりが出逢い、
ゆっくりとおつきあいが始まり、
お互いに「もしかしら、この人かしら」と思う気持ちが徐々に芽生え、
ふたり同時に結婚の2文字を思い描く。
 
考えてみれば不思議なこと。
 
それを世の中では『ご縁』と呼ぶのだと思うが、
何万何十万という未婚の男女がいる中で、たったひとりの相手を選ぶというのは
「ご縁があったから」のひとことでは到底語りきれない人の世の妙を感じる。
 
大昔、自分が結婚したときには『絆』というタイトルの小品を
披露宴に出席していただいた方の分、約130枚ほどを摺って、
額縁に入れ、引き出物にした記憶がある。
 
今回は母親として、
娘の結婚を機に考えたこと、感じたことを作品にしたいと思っている。
もちろん引き出物にして、みんなに配ろうなんていう
押しつけがましいことは考えていない。
 
テーマは『結婚』
見ず知らずの人間がひょんなことで出逢い、
今まで全くタイプの違う生活をしてきたのに、
ある時から同じ時を刻んで生きていく。
 
それを時計草というまるで時計の文字盤のような花をモチーフに表現しようと思う。
 
時計草は花屋さんで売っているような花ではなく、
東南アジアが原産国のツルもの植物である。
 
けっこう生命力が強くて繁茂すると聞いたので、自宅の庭に植えて、
花が咲くのを持つことにしたのが約2ヶ月前。
 
たしかに生命力は強く、いまではフェンスに絡まりながら、
四方八方に触手を伸ばし、となりのばらやデイジーに巻き付いたりして、
やりたい放題になっている。
 
夏に開花時期を迎える花なので、つぼみがふくらみ、花もいくつか咲きだした。
驚いたことに花は1日花らしく、咲いたかと思ったら次の日には姿がない。
個性的な花の顔だちだが、その咲き方も個性的だ。
大胆に咲いたかと思ったら、いさぎよく散ってしまう。
 
葉っぱの形もなかなか絵になる形でかわいらしく、
なによりツルものなのでどんどん伸びて絡まっていく様子が、
ふたりが出逢って、あらたな家庭を作っていくことを表現するのに適している。
 
さっそく2本ばかり茎を切り、アトリエでデッサンしながら思い描く形にしていく。
 
今年初めから使い始めた藁苞をふたりのこれからの人生に見立て、
そこに2本の時計草の蔓が絡まりながら、ひとつの家庭を作っていく様子を
表現している。
 
時計草には白いもの、赤紫のもの、紫のものなどがあるので、
別々の時を刻んできたふたりの象徴として、
いろいろな色の時計草を画面に配置しようとイメージが膨らむ。
 
こんな風に最後の色彩のイメージまで見えている作品は作業がしやすいし、
いい作品になることが多い。
 
昨日・今日で、鉛筆による原画とトレッシングペーパーに清書するトレペ原画が
出来上がった。
 
たて93,5㎝×横74㎝の版画としては巨大な作品。
中央で2枚の和紙を接ぎ合わせるタイプの作品で、
私の作る版画作品としては最大級の大きさになる予定だ。
 
次は天気のいい日(雨だと湿気でトレッシングペーパーが伸びるので)を選んで、
一気呵成に版木に転写して、
夏中かかって彫り進めようと思っている。
 
きっとその間にもふたりは新居に引越したり、
入籍したりして、
新たなる時を刻み始めることになるのだろう。
 
当人達はやることや決めることだらけで、あたふたしていると思うが、
私は親の立場で、時に手助けしたりしながらもこの状況を楽しんで、
俯瞰した目で眺めながら、思うところを作品に残したいと考えている。
 
いよいよ我が長女、巣立ちの時である。
 

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