2018年7月29日日曜日

石田様にかぶりつき

 
 
 
台風12号が、進路によっては関東地方に上陸かと思われた昨夜、
かねてより予定していたコンサートに行ってきた。
 
トリオ・リベルタのコンサートで、
最近は関内のKAMOMEでのライブに行って、聴くことが多かった。
 
しかし、昨夜は青葉台のフィリアというコンサートホールだった。
 
KAMOMEの時と同様、
チケット入手に奔走してくれたのは友人Sさん。
 
私などよりずっと熱心なリベルタというか、
ヴァイオリニスト石田泰尚氏の追っかけで、
何と、今回は前から2番目の中央からやや左の席を抑えてくれていた。
 
中央から左ということは、
舞台中央にピアノの中岡太志さん、向かって右にサクソフォンの松原孝政さん、
左に石田泰尚さんなので、
その席の目の前にお目当ての石田様が立っているという計算だ。
 
帰りは大雨で帰れないかもと心配する中、
前から2番目の席じゃ、行かないわけにはいかないと、
私はレインコートに長靴を履き、
でも、中は胸の開きが深いワンピースといういでたちで会場に向かった。
 
座ってみると、石田様の膝頭が一番近くで2,7メートルというあたり。
顔とヴァイオリンは、少し見あげるので3メートル。
 
そんな至近距離で、愛しの石田様が演奏しているのだ。
 
コンサートの前半のプログラムは、
サマータイムに始まり、火祭りの踊りや牧神の午後など。
 
今回の中岡さんのMCは、曲の解説というか、詩の朗読のような感じだったので、
メンバー紹介や近況報告みたいなおしゃべりは一切なく、
会場の床に灯されたろうそくの灯のように、
コンサート自体が、映画のシーンのごとく
静かに炎が揺らめいているような感じだ。
 
石田様は黒いスーツに身を包み、黒いシャツ、白っぽいネクタイ、
白い薔薇が胸のポケットに入っている。
 
まるでその筋の人かとも思えるし、
スタイリッシュとも言えるいつものスタイルだ。
 
五分刈りにした頭髪にそり込みが入っているので、
ますます怪しい職業の人のように見えるのに、
ヴァイオリンの音色は繊細かつエモーショナルなので、
そのギャップにみんなやられてしまう、いわゆるギャップ萌えという奴だ。
 
プログラム前半に私より1席右にいた友人が、
休憩時間になって
急に「駄目、近すぎて息ができない」と言ってきた。
席を替わって欲しいというので、「え~、ホントに」と言いながら、
席を交換していみると、確かに近い。
 
本当に真ん前で石田様がその細い身を反らせたり、くねらせたりしながら、
しなやかにヴァイオリンを弾いている。
もちろん表情も丸見えだし、
向こうの視界に自分が入っているのは間違いない。
 
譜面代と石田様との空間に、ピアノの中岡さんの姿がすっぽり入る、
ベストポジションだ。
 
そして、少し右に離れたところに4台のサクソフォンを並べ、
曲によって使う楽器を使い分けている松原さんがいる。
 
プログラムの後半は、アストル・ピアソラの曲ばかり。
2曲目に弾いた「バンドネオン」という曲の冒頭では
松原さんがバリトン・サックスという見たこともない大きなサックスで
重厚な音色を聴かせてくれた。
 
リベルタの演奏会を追いかけて何度も聴いていると、
ピアソラ大好き3人トリオの努力の跡が垣間見える。
 
そもそもピアソラの曲はタンゴなので、バンドネオンが必須なのに、
それを使わず、サキソフォン奏者の松原さんがメンバーというだけで、
どの曲にも編曲と構成が必要になってくる。
 
その労をも楽しんで、唯一無二のトリオを目指しているのだということが
ひしひし伝わってきた。、
しかも、今回はバリトン・サックスまで飛び出し、
かれらのピアソラ愛がハンパないことが証明されたと思う。
 
そんなパッショネイトな音色を直に肌で感じるような距離で味わい、
そのまま落ちてきたら、この胸に抱きとめたいと思うような位置で、
石田様を眺め、
幸せなひとときを過ごした。
 
会場を出てみると、
台風はどこへやら。
 
傘すらささなくてもいいような穏やかな夜、
人影さえまばらな静かな街を歩けば、
アンコール曲のリベルタンゴがいつまでも耳の奥に響いていた。
 
 

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