2021年10月4日月曜日

映画鑑賞「MINAMATA」

 



映画「MINAMATA」を観た。
どんな意図でこの映画が撮られたかが
知りたかったから。

この映画の舞台は熊本県水俣市と
「LIFE」社のあるニューヨーク。

水質汚染の公害による水俣病患者をルポした
ユージンスミスの物語だから
日本の公害問題の話なんだけど、
アメリカ人監督が創ったアメリカ映画である。

つまり視点はアメリカ人なので、
どんな描かれ方をしたのか
興味があるとともに、ある意味、心配だった。

結論からいうと
本当のユージンスミスとは
人物像としてはかなり違うのではないか。

史実をどこまで正確に調べて撮っているのか。

映画としてはそこそこ面白かったけど、
この映画を観た水俣の人は
どんな風に感じるのだろうという
印象をもった。

ジョニーデップがユージンスミス役で、
写真や映像に残るユージンスミスに
かなり寄せていて、
演出スタッフとしてのジョニーデップの意気込み
みたいなものは感じる。

しかし、映像に出てくる
ユージンスミスは完全にアルコール依存症だし、
薬物やたばこの依存も疑われる状態。

日本に取材にきた目的は
「LIFE」の要求する目を覆いたくなるような
(金になる)悲惨な情景を写すこと。
だとしたら、それはアメリカ人の傲慢だ。

写真家は
そうした悲惨な真実が欲しかったのか、
公害問題を暴いて抗議したかったのか。

「ものつくりびと」のピュアな性とは違うところで
ユージンスミスは描かれており、
本当にそういう人だったのか、
ユージンスミスが生きてこの映画を観たら、
何というだろうと考えてしまった。

とはいえ、
ユージンスミスが残した1枚の写真
「入浴する智子と母」は
まるでピエタのように崇高だ。

その1枚が人の心を突き動かし、
1本の映画を撮ろうと思わせたことは
間違いない。

その有名な1枚の写真の公開を巡っては
今現在でももめているらしく、
物議をかもしたり、
そこにお金が動いたりするのは
横に置いておいて、
素直に1枚のモノクロームの写真として眺め、
感じるままに思いを馳せたい。

裁判で勝訴し、
被害に遭った人々がお金が支払われて
ハッピーエンドみたいな映画の終わり方は
「それは違うな」というのが
個人的感想である。

それがアメリカ的、
もしくは映画の興行目的だとしたら、
日本人としていささかモノ申したい気分である。




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