2022年10月9日日曜日

YOUは何しに上野へ

 




















私が所属している団体展の会期が始まった。
場所は上野の東京都美術館、通称・都美館。
名称は「版画展」、主催は版画協会。
(ザ・版画だけの展覧会という意味とか)

最近は搬出入は業者任せだし、
審査にも展示にも関わっていないが、
自分の作品がどの展示室にかかっているのか、
見もしないで会期を終えるわけにはいかない。

ちょうど同じ会期に友人の団体展もやっていて
今年はその団体展内の企画で
壁面を10メートル以上もらって展示するから
見に来てほしいと書状付きのご案内が来た。

そりゃ、一世一代の大仕事だと思うので、
見に行ってあげなければと、
ひとり、上野駅に向かった。

上野駅10時15分着。
どこから湧いて出たのかと思うほどの
人・人・人

老若男女入り乱れ、
公園口から吐き出され、文化会館を横目に
奥の広場へと向かっていく。

まるで
「YOUは何しに日本へ」という番組があるが、
そう尋ねたくなるほどの人の多さだ。

バギーを押したり、小さい子供の手をひく
親子は、間違いなく上野動物園へ
行くのだろう。

文化会館のトイ面、
リニューアルした西洋美術館では
「ピカソとその時代」展なる展覧会をやっている。

今日は予定にはなかったけど、
にわかに観てみたくなる。

広場のテントはどこかの武将の旗をたなびかせ
縁日のテントやキッチンカーが立ち並び、
手前のいか焼きのブースから
香ばしいイカの匂いが広場中に拡がっている。

そちらによろめきそうになるのをこらえ、
都美館にはいり、
まずは版画展に入場し、
自分の作品が何室に飾られているのか確認する。

いつもどおりぐらいの13室の
正面の壁の少し左寄り。
まあまあの位置にあったので、一安心。

今年の6月の紫陽花展で皆さんに見ていただいた
作品なので、
再びお誘いしたり、案内状を出したりしなかった。

40数年前から出品しているけど、
自分の中の位置づけが変ってきて、
版画展そのものが遠のいているのを感じる。

見知らぬ若手の入賞作品を見、
旧知の会員の作品をそちこちに確認し、
あとは大きな会場を歩き通し、
出口に出た。

続いて、同じ都美館の上の階でやっている
「東京展」なる団体展を一巡した。
こちらはタブロー作品なので、
版画に比べ大きな作品ばかりで
好き嫌いは別にして、その熱量に圧倒される。

友人の企画展の作品も
ひときわ熱量の大きい作品群で、
私よりいくつか年上の彼女の顔を思い浮かべ
どこからそんなパワーがあふれ出るのかと
呆れるやら驚くやら。

東京展は写真撮影禁止だったので、
スマホはバッグにしまい、
会場の一番奥の休憩室に入ると、
そこは外界と遮断された無音の密室空間で
ガラスの向こうに動物園の裏口が見えた。

三連休の中日、
夕方からまた雨が降る前に
家にいてもしょうがないからと
出てきたらこの行列。
そんな喧騒に疲れた風の親子連れが
音のない世界の向こうで
裏口から次々出て来ていた。

見るともなくその景色を見ながら、
水分補給をして
キャラメルを一粒、口に入れた。

12時を少し回っていたが
今、お食事処に行くと満席が予想されたので、
行きに通った「ピカソのその時代」展を
見ていくことにした。

ちょうど12時30分までに入場する組に間に合い、
列の最後について
会場に入ると、ピカソのブルーの時代の作品が
目に飛び込んできた。

私が油絵を描いていた頃、
ピカソは時代の寵児ともてはやされ、
作品だけではなく
華やかな私生活や精力的な活動ぶりが
よく報道されていた。

3人分ぐらいの人生を歩んだと言われ、
膨大な量の作品が恐ろしい高値で取引されていたが、
亡くなった後、しばらくすればその価値が
決まってくるだろうと言われていた。

あれから数十年、
ピカソと同時代を生きた作家は多く、
この展覧会で、それらの作家たちにおよぼした
ピカソの影響力はいかばかりであったかと
うかがい知ることが出来る。

入場料2100円は、最初「高っ!」と
思ったが、
かなりの点数が来日しており、
見ごたえのある展示だったので、
十分その価値はあるのではないだろうか。

相当、歩き倒し、
もはや限界と感じたので、
駅の2階の台湾料理のお店に直行し、
順番待ちに椅子に座り込んだ。

30分は待つだろうかと覚悟を決めていると、
隣の40代とおぼしき女性が話しかけてきた。
「上野には何しにいらしたんですか?」と。

「私は都美館に来たんですけど、
帰りに寄った「ピカソ展」も
すごくよかったですよ」と答えた。

「えーっ、私も都美館です。
あの椅子の展覧会ですか」と
都美館でやっているスウェーデンの椅子展を
見てきたという。
そうそう、横目で見ただけだけど、
その椅子展にも人だかりが出来ていた。

異様に寒くなったり、雨が降ったりの
ここ数日、
なんとか夕方までは天気も持ちそうだし、
ちょうどいい気温。

みんな同じことを考えている。
YOUは何しに上野へきたのか。
わたしゃ上野に絵の鑑賞。

どんぶらこどんぶらこ
道には人があふれていたとさ。







































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