11月の三連休、
初日は「反田恭平ピアノリサイタル」
みなとみらい大ホールにて
15時開演
2021年、反田君がショパンコンクールに出て、
2位を受賞したあたりから、
ミーハーに気にはしていたけど、
なにしろ人気が凄くてチケットが取れない。
『題名のない音楽会』にはよく出てくるので
そういう時はなるべく見逃さないようには
していたが…。
今回、反田君が高校生ぐらいの時から
追いかけていて
ファンクラブにも入っている
某音大楽理科卒の友人が
先行発売のチケットを入手してくれた。
待ちに待ったコンサートだったが、
外はあいにくの雨。
どうやら数か月前に同じ友人と
別のコンサートに行った時も
雨だったそうなので
この雨は彼女のせいらしい(笑)
今回の曲目
ショパン:
幻想ポロネーズ変イ長調作品61
ラヴェル:
夜のガスパール
1.オンディーヌ 2.絞首台 3.スカルボ
ムソルグスキー:
組曲「展覧会の絵」
1.こびと 2.古城 3.チュイルリーの庭
4.牛車 5.卵の殻をつけた雛の踊り
6.サムエル・ゴールデンベルクとシュムイレ
7.リモージュの市場
8.死せる言葉による死者への呼びかけ
9.鶏の足の上に建つ小屋 10.キエフの大門
私は生音で反田君の演奏を聴くのはこれが初めて。
友人は高校生の彼の演奏を初めて聴いた時
そのピアニッシモの美しい音色に
いっぺんでノックアウトされたという。
さて、一体それがどんなものなのか。
最初の曲が静かに始まった。
30秒ぐらいで、
最初のピアニッシモのパートに差し掛かり、
私の体に臙脂色のベルベットの布が
毛布のようにふわりを掛かったのを感じた。
そのベルベットの光沢としなやかさと
波打つ艶までもが見て取れる。
たった1台の舞台の上のグランドピアノ
しかもピアニッシモの1番小さな音なのに
豊かに響いて会場の端まで行き渡った。
これが彼女の言うピアニッシモの美しさか。
その後、曲調はだんだん激しいものになって
いつのまにか大きな波が打ち寄せ
船の甲板に砕け散る映像に変わった。
(会場にスクリーンがあるわけではない)
私の場合、いい音楽に触れると
必ず何かしらの映像が脳裏に浮かぶ。
2曲目のガスパールの最初には
まず、白いレースのカーテンが
風でふわりとひるがえり、
その後、大量の真珠の粒が跳ねながら
坂を転がり落ちるように押し寄せてきた。
どうやら反田恭平の体には
音楽が宿っているに違いない。
友人曰く、
反田君は大して練習もしないで
これだけの大曲を譜面も見ずに
弾きこなしてしまうという。
激しい曲では
あんなに大きなフォルテの音の連続で
1音でもミスしたら大変だと思うのに、
あの重たげな全体重をのせ
思い切り情熱的に弾いている。
そのピアニッシモとフォルテの振り幅の大きさ
それはもう体に音楽が棲みついているとしか
いいようがない。
後半の曲目はムソルグスキーの『展覧会の絵』
これはムソルグスキーが
友人の画家ヴィクトル・ハルトマンの
絵に触発されて作曲したものだとあるが、
逆に私はこの10の曲を聴いて
10枚の全く違う絵を思い描いた。
ある曲は
雲一つない青空の下、広がるひまわり畑
ある曲は
真っ黒いキャンバスを引き裂いて
男がまたいでこちらにやってくる様子
ある曲は
水面にはねる雫のキラキラ・ダンス
ある曲は
グランドピアノの上には3人の天使が舞い、
天井のスポットライトがいつのまにか星空に
反田君のピアノで
私は何枚もの絵を描いた気分だ。
あっという間の2時間で
外に出ると雨脚は最高潮。
神奈川県に大雨警報が出るぐらい。
履いてきたパンプスは
川のようになった桜木町の駅前あたりで
もはやズブズブ。
それでも、路面に叩きつける雨音さえも
ピアノの連打のように聴こえてくるのは
ひとえに
今宵の演奏が素晴らしかったからだろう。
連休初日
雨でずぶ濡れ。
それでも生反田恭平のピアノを聴けて
心は豊かで美しい。
(と、思いたい)
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