私のホリデーは何も予定がなければ
「彫りデー」になることが多い。
この3連休も中日と最終日は「彫りデー」だった。
ひとり静かに彫り台に向かい、
音楽をかけていることもあるし
無音の中で考え事をしながら彫る時もある。
今日は最近、ある人から言われたひと言が
頭に去来し
それをきっかけに思いを巡らせた。
あさイチに彫り台に向かった時は
何気なく脇のテレビをつけたのだが
NHKの番組で、平野レミがLIVEで短時間に
何品もの料理を作るという賑やかな番組を
やっていた。
この番組は10周年らしく、
過去の人気メニューを再現するというのが
今回の内容で、
過去の放送回の分とLIVEで作っている分が
交互に出てきて、終始、平野レミは
うるさいほどにしゃべりながら、
それでも手際よく料理を仕上げていく。
そして、最後に
「レミさんはカラフルな料理を作ってきましたが
レミさんの人生はいったい何色ですか」と
あまりにわざとらしいアナウンサーのフリを受け
「バラ色の人生ですね」と答えた後、
いきなり『バラ色の人生』を歌い出した。
平野レミは元はシャンソン歌手なので
それまでのガチャガチャしたおしゃべりとは
一転して
フランス語で歌う『ラヴィアン・ローズ』は
声も低く
しっとりとして思わず画面を二度見した。
なぜ、『バラ色の人生』に
そんなに引っかかったのかというと、
つい最近、ある男性(35)から
「先生、いい人生ですよね」と言われたからだ。
その人には7~8年前、
HPに貼る動画を撮影してもらったのだが、
コロナ禍を挟んでご縁は途切れていた。
しかし、今回新たなHPを制作するにあたって
見る人の滞留時間を長くするために
以前の動画をまた貼り付けようと思い、
データを貸してもらうため
お願いの電話を久しぶりにしたのだった。
Sさんにとっては、私は昔のお客さんのひとりに
過ぎないがよく覚えていてくれ、
「先生は絵も描かれるし、カウンセリングで
人のためになる仕事もなさって…」の後に
さっきの「いい人生ですよね」が続いた。
『いやいやいや、まだ生きているから
総括しないでくれる』とも思ったけど、
素直に30代の若者にそう見えているとしたら
嬉しいと感じた。
(当時、彼は展覧会も観に来てくれている)
実は昨年のグループ展にいらした
10年ぶりぐらいに会った友人(女性)からも
同じことを言われたことを思い出し、
『いい人生』と思える人生って何?と
彫り台で手を動かしながら考えた。
シャンソンの『バラ色の人生』の歌詞は、
好きな男に抱かれている私はバラ色の人生
あなたのために私がいて
私のためにあなたがいる
というような歌詞なのだが…。
そんなに短絡的に男女が絡まらなくても
『バラ色の人生』と思える人生は
あると思う。
逆に、その人ひとりひとりが
『我が人生に悔いなし』と思って
人生を丁寧に生き切れば
それは『いい人生』であり『バラ色の人生』
なのではないだろうか。
ものは捉え方ひとつで
見え方が違ってくる。
はたから見て、
私の人生が『いい人生』だとしたら
きっと私がやりたいことに正直に
果敢に挑戦することを恐れず、
それをエンジョイしているように見えるから。
12月初めに会った友人が
手土産にマリアージュ・フレールの
紅茶『パルコポーロ』をくれた。
彫りの合間に一息つこうと
その黒いパッケージの封を切り、開けると
金色の箱の中にはコロコロと紅茶の玉が
たくさん詰まっていた。
チューリップの絵が描かれたマグカップに
そのひとつを入れ、お湯を注ぐと
芳しい異国の香りが匂い立った。
そのマグカップは、マルコポーロをくれた友人と
ベルギー・オランダを旅した時、
美術館のミュージアムショップで求めたものだ。
たちまち、その時の旅の思い出がよみがえり、
その旅で観たゴッホの絵画や
満開のチューリップや風車が
脳裏に広がった。
マルコポーロは何を目指して船を出したのか。
私はこれから、どこへ行くのか。
何ができるのか。
1杯の紅茶がさまざまな思いを想起させ、
ひとときの憩いをもたらした。
こんな風にホリデーも
ひとりもの思いにふけりつつ、
静かに彫りを進めていき
やがて『いい人生』につながっていくとしたら
こういう1日も悪くない。
そんな風に思えたホリデーだった。



















































