数日前、友人KさんからLINEが来て
「お時間作ってもらえますか」と言われた。
ちょっとただならぬ感じを受けた私は
3月の空いている日時をいくつか書いて
送ったところ、
最も近い日に銀座で会うことになった。
Kさんとは長いおつきあいで
それぞれの次女が同じ高校の同級生で
PTAのママ友として知り合った。
ミッション系の私立高校で
バザー委員なるお役目のために参加した会で
お話ししたところに端を発するから
四半世紀近くのおつきあいになる。
ママ友から始まり、
娘が大学に進学し、就職し…と変化する中
娘のママ同士の枠を超え、
20年ぐらい前からは
毎年のように一緒に海外旅行に行く
唯一無二の友人同士になった。
しかし、3年半ほど前に
彼女の旦那様が病に倒れたことを機に
「今、家を出られない状態なの」という言葉を
残して彼女はすべての交友関係を絶った。
それ以来、
展覧会やママランチにお誘いしようにも
素っ気ないお返事が続いたので
とりつくしまもなく時は流れた。
友人同士のおつきあいには
いろいろな形があると思うけど、
あれほど一緒に毎回、10日間も旅行に出て
わくわくドキドキ楽しく過ごした仲なのに
「こんな時、何も教えてくれない」と
少し拗ねるような気持ちでいた。
ついには
「もう友達じゃなくなったの?」と
LINEで書き送ったことは
Kさんの心に小骨のように突き刺さったまま
2年以上の時が過ぎ、
ようやく再会したのが一昨年の12月初め。
その時も銀座で会ってランチしながら
初めて旦那様の病状の詳しい話を聴いた。
そこから丸1年経った昨年12月初め、
同じく銀座でランチして
その後、資生堂パーラーでパフェを食べた時は
「九死に一生を得た夫は目下、小康状態」
そんな1年間の経緯を話してくれた。
彼女はこの3年数か月、
交友関係も半ばお仕事のように関わっていた
趣味の世界からも遠のいて
看護の日々だったという。
一昨年の再会の時はかなり悲壮感があったけど
昨年の再会の時は
出かけようと思えば、
「夫に入院していてもらえればできるわよ」と
少し吹っ切れた様子だった。
そして明けて今年のお正月。
3日にお誕生日を迎えた彼女に
誕生日のおめでとうメールを送ってみた。
ご家族でお祝いの食事会に出かけたとある。
そんなことも出来たのかと少し安堵した。
それから月日は少し流れ
3月に入って、
いきなり今回の「お時間ありますか」の連絡。
ちょっと嫌な予感もあったけど
LINE上では何も訊かないままに日時を設定し
同じく銀座でランチすることにした。
レストラン・ライオンの2階の個室に通され
ハンバーグランチが届いたと同時に
お正月休みが終わった日に
旦那様が旅立ったことを知らされた。
彼女の誕生日の数日後になる。
3月初めというのは
すでにお葬儀も納骨も済まされ、
ホッと一息ついたタイミングでの
いの一番の連絡だったようだ。
こういう距離の取り方は実に彼女らしいし、
決して友達じゃなくなったわけじゃないことを
分かって欲しいというタイミングなんだと
思った。
あの毎年のように海外旅行に行った
楽しくてキラキラした思い出。
必ず展覧会に来てくれ、
1番気に入った大きな蒼い鳥の作品を飾るため
おうちの壁のリフォームまでしてくれた。
そんなKさんが旦那様を看取り
私に何のわずらわしさもかけまいと
すべてのことを済ませた上で
「またどこかへ行きましょう」と
戻ってきてくれた。
「もうこれで今年は萩さんの個展も行けるし
旅行でも何でもできますよ~」と
思いのほか、清々しい様子だ。
私ならもっと甘えていろいろ愚痴を聞いてと
連絡してしまいそうなところを
スパッと距離を置く
Kさんの男気のようなものを感じた。
資生堂パーラーで
前回、品切れで食べられなかった
「資生堂パーラー物語」のプレートを前に
娘さんに
「今、萩さんとデートなの」とLINEするKさん。
私は置き去りにされたとばかり思っていたけど
K家の中で「萩さん」は
ちゃんとまだ忘れられていなかった。
家で何かの記念写真を撮る時は
「萩さんの蒼い鳥の作品の前で撮るのよ」
という話を聴いて
私は涙が出そうになった。
また、一緒にどこかへ行きましょうね。
どこにする?いつにする?
そんな話を最後に
私たちは銀座の街でハグしてお別れした。
お茶のお社中の友人Kさんと
鎌倉駅で待ち合わせて、
お稽古に向かう手前の時間に
何か所か鎌倉散策を楽しんだ。
昨日と今日があまりにも寒いので
どの程度の恰好をしたらいいのか迷いつつ、
お茶のお稽古のドレスコード着物に合わせ
出かけることにした。
いくら寒いとはいえ、
すでに3月半ば、
春らしい着物が着たいと思って
ベージュ系の紬の着物に格子柄の帯を選び
鎌倉駅へと向かった。
期せずしてKさんもベージュ系の紬だったので
姉妹のようないでたちになった。
まずは八幡様にほど近いギャラリーに
友人の個展を訪ねた。
「文学と版画展」でご一緒したSさん。
会派も違うし、絵肌も違うけど、
軽やかな作風の作品で素敵な作家さんだ。
KさんとSさんは初対面だったけど
ふたりは鎌倉在住なので、
地元話で盛り上がっていた。
2か所目は呉服屋さんの展示会。
こちらはKさんの行きつけの呉服屋さん。
私はついうっかり乗せられないよう
サラっと流して失礼した。
3か所目はランチ予約をしてもらった
イタリアンのレストラン。
小町通はインバウンドでごった返していたけど
ここは日本女性でいっぱいだ。
どこに行ってもランチタイムのレストランは
女性の独壇場で男性は肩身が狭い。
お値段の割におしゃれなちゃんとした造りで
お料理も美しい。
しかし、昨今ありがちな人手不足なのか
一皿出てくるのに時間がかかり過ぎ
お稽古に向かう時間とのせめぎ合いで
最後はバタバタになり
しっかり味わう余裕がなくなってしまったのが
残念。
お昼の12時半までに3か所も行こうとした
私たちが悪いのか
お客さんの人数に対して
少人数で回そうとするレストランが悪いのか。
それはさておき
鎌倉の春はすぐそこまで来ているようで
ボケの花と三俣の花が咲き誇り、
桜咲く一歩手前の鎌倉風情を味わった。
きっと段葛の桜並木の桜が咲いてしまうと
もの凄い人が押し寄せてしまうので、
ボケと三俣の花を愛でる方が
わちゃわちゃしないでいいのかもしれない。
着物姿のふたりが
時折、小走りになりながらも
鎌倉をいくのは
傍目には優雅に見えるかもしれないが
その実、どこも時間制限いっぱいで忙しい。
午後は北鎌倉でいつものお稽古が始まり、
午前中のにぎやかさはどこへやら。
静かな茶室で練りたてのお濃茶の香りを
愉しんだ。
お茶室の花器にも
ボケの花は生けられていたけど、
茶花なので楚々としている。
街の満開の花もいいけど
お茶室の引き算した花もいい。
何事も過ぎたるは及ばざるがごとし。
人も多過ぎるとせわしないだけになる。
時間のゆとりと味わう心が大切と思いつつ、
結局、盛りだくさんな鎌倉散歩だった。
スマホは
ムーブリング「300%達成」と言っている。
本日の総歩数9,535歩
着物でこの歩数は歩きすぎか(笑)
















3月8日~9日の1泊2日で
ダンナと次女と私の3人で箱根に行ってきた。
名目はダンナの誕生会。
本当の誕生日は1月なのでとっくに過ぎている。
長女が結婚し子どもが生まれてからは
彼女は簡単に夜、出歩けないので
この3人で誕生会と称して
誕生日ディナーを行ってきた。
しかし、今年は「温泉に行きたい」という
当人の希望を尊重して
温泉旅行に出かけることにした。
場所や日程はとかく口うるさい人たちに任せ
私はただその予定に乗っかり
美味しいものを食べ、
温泉三昧を決め込むことにした。
「源泉かけ流しの温泉じゃないと嫌だ」
「口コミの評判が悪い人がいるのは気になる」
「ポーラ美術館と箱根神社に行きたい」など
とにかくダンナの意向を汲み
次女がいろいろ検索し決定したのが
箱根の強羅にある旅館「翠雲」だった。
中学生以下は泊まれない大人のお宿で
今流行のオールインクルーシブ。
お料理の評判がとてもいいので
私もとても楽しみにしていた。
強羅は山の上にあるので路面が凍結し
スノータイヤでないと
ダメかもしれないということで、
直前にそんな準備もしながら
車で出かけることになった。
天気も上々、8日はピカピカの晴れだった。
行きの車窓から見える富士山も
雪をいただいた壮麗な姿を見せ
箱根駅伝でマラソンランナーが
走る道そのものを一路強羅に向け走った。
幸い箱根は山にさしかかっても
雪らしきものは跡形もなく
結局、心配したことは何も起こらなかった。
ふたりがいろいろ揉めながら決めたお宿も
若めのスタッフが着物姿で立ち働く
気持ちのいいお宿だった。
お部屋はヒノキの露天風呂がつき
気持ちのいい寝具のベッドが4つ。
ファミリータイプの間取りなので3部屋ある。
ただ、
温泉がダンナこだわりの源泉かけ流しでなく
温泉には違いないけど
硫黄泉ではなく泉質はサラっと系。
ダンナはそこがイマイチだったみたい。
しかし、お料理は評判通りの豪華さで
いずれも丁寧に作られた懐石料理。
最初のお盆にはお造りにはじまり
数えきれない品数の小鉢ものと蛤のお吸い物。
メインとその次とご飯は幾種類かの中から
選ぶプリフィクス方式だ。
夕飯の他にも
お抹茶のコーナーがあり、
目の前でお姉さんがお茶を点て
和菓子と共にいただける。
お風呂上りに食べられるよう
ハーゲンダッツやアイスキャンデー
雪の下にんじんのジュース、牛乳、
サーバーから注ぐ生ビール、
夜食のラーメンなど、到底食べきれない量の
いろいろなサービスがつく。
オールインクルーシブだからと
勢い込むけど、
あまりに種類が多すぎて制覇できそうにない。
完全にいつもの食事量を軽く超え
体重計に乗るのは当分怖くてできないだろう。
更に朝食も引き出し付きの三段重に
ぎっしり小皿が入っている上に
別のお盆に金目鯛のひものや
豆乳かのような豆腐なべがついた。
夕飯も朝食もお品書きだけ見ても
その手の込みようと豪華さが知れる。
お食事狙いの方にはおススメのお宿だ。
2日目は
ようやく箱根らしい所にもいくことになり
次女の発案で
ポーラ美術館と箱根神社に行くことに。
箱根にはいくつもの美術館があるけど
ポーラ美術館は私も初めてだ。
常設の作品にはモネやルノアール、ピカソ
ゴーギャン、ルソーなど
かなり資金を投じて収集された作品がある。
しかし、目的は現在行われている企画展で
「SPRINGーわきあがる鼓動」
と題された展覧会だ。
ポーラ美術館は箱根の山に抱かれた場所にある。
その美術館の企画展として
美術館の置かれた場所に意味があるようだ。
春、生命が再生する時間の中で
その春の芽吹きのように湧き上がる鼓動を宿し
私たちの存在と歓声を揺さぶる絵画
彫刻、工芸、インスタレーション作品を
紹介するとある。
展覧会は想像以上に刺激的で
静謐でありながら
地面の下から躍動するような力を
確かに感じることができた。
正に啓蟄か…。
2026年5月31日までの会期なので
機会の持てる人には
是非、観ていただきたいと思った。
美術館の後はすでにランチタイムだったけど
あまりに飽食の夕飯と朝食だったので
ランチはパスし、
箱根神社と関所にも行ってみた。
こちらも私は初めての場所だったので
新鮮だったけど、
箱根神社は人も多く、
湖に突っ込むように立っている鳥居の下で
写真を撮りたい若者が
長蛇の列をなして順番を待っていた。
次女も私ももちろんダンナも
その手の流行りものが苦手なので
横目で見ながら退散した。
最後は3時半を回った頃に昔からある
お蕎麦屋さんで自然薯そばを食べ、
金目鯛とかますの干物を買って
帰りの途についた。
箱根路をおりてくればくるほど
人も増え、繁華街っぽくなる。
非日常の贅沢と
非日常の芸術は山の上にある。
そんなことを家路を急ぎながら感じた小旅行。
命の洗濯は出来ました。
3月の上旬がこんなにしんどくなったのは
何年前からだろう。
毎年毎年2月中頃から
「今年の花粉の飛散量は例年より多い」という
気象庁の発表を聞いているような気がする。
例年とはいつのことを指すのか。
気温の例年は過去20年の平均値をとり
それより高いとか低いというらしい。
つまり、気温は20年以前だから、
平成の始めや昭和はカウントされていない。
昭和生まれの人間が
「昔は30度を超えると暑い暑いと
言ったもんだ」などというのは
はるか昔のカウント外の出来事なのだ。
それと同じで
杉花粉の飛散量も毎年更新されているとしたら
10年前などとは比べものにならないぐらい
飛んでいる気がしてならない。
今年は2月23日の春一番が吹いた日に
カチッと音がするぐらい明快に
花粉症の症状が始まった。
以後、今日までそれは止む気配は
全くない。
それどころか、雨が降ると
花粉が砕けて小さくなり、
雨上がりにブワッと飛び散り
マスクも通過するとか。
聞いただけでもクラクラする。
まるで花粉が見えるようである。
そんな状態なのに
今週は1日の日曜日から6日の金曜日まで
コピペしたかのように
朝10時からのカウンセリングが並び、
その後のカーブスかお茶のお稽古、
各種買い出しなどで出歩く毎日だった。
その間、花粉症の症状はひどくなる一方、
コンタクトレンズが使えないので
しかたなくメガネにマスク姿になり、
行く先々で
「先生、メガネだったんですね。
花粉症ですか、私もです」という会話が
デジャブのように繰り返された。
寝ていてさえもくしゃみが出るし
目は悶絶するほど痒く
目の周りをグリグリしてしまうせいで
涙の塩害と花粉のゴロゴロとで
目はバンパイヤ、瞼は二重ならぬ三重に。
この表現は去年も書いた気がして
頭がバグリそうである。
そんな辛い1週間を払拭するため
本日は新作版画の原画を
トレッシングペーパーに写し、
更に版木に転写する作業をした。
個展を見据え、
もう2点、雨だけを作品化したものを
創ろうと思っている。
いつも本摺りの途中で
ここで辞めてもいいかもと思う瞬間があると
書いたと思う。
それを実際にやってみようという訳だ。
結局、雨だけでは心細いので
ちょこっと猫がいたり、
紫陽花のシルエットが入ったりしているが、
基本、
雨だけで成立するかのトライアルである。
今日は1歩も家から出ていないので
さすがに目の痒みやくしゃみは出ていない。
体は正直にできている。
異物が混入すれば排斥しようとする。
異物の侵入を絶てば
落ち着いたもんだ。
外の風の音を聴きながら
今日1日は静かに
在宅作業にいそしむことにする。