2026年2月17日火曜日

銀座あちこち詣で

 












今日は東銀座の東劇に始まり、
京橋の柴田悦子ギャラリーまで、
銀座で5か所ほどの用事を済ませた。

総歩数は11018歩
ムーブゴールの300%を達成し
スマホに大いに褒めてもらった。

まずは月イチ歌舞伎の
「二人藤娘」と「日本振袖始」
(歌舞伎の舞台を映画にリメイクしたもの)

「二人藤娘」は玉三郎と七之助のふたりで
踊る藤娘

「日本振袖始」は
タイトルとは似つかわしくないが
自分を選ばず妹と結ばれた姉が
恨みのあまり
大蛇になって人身御供の娘を食らう話
ひとり二役は玉三郎

要は玉三郎の至芸を
映画という大スクリーンで堪能する。

東劇の「月イチシネマ歌舞伎」は
いつもマニアックな歌舞伎ファンしか
来ないのだが、
なぜか今日は後ろの席まで埋まる
満員御礼状態。

よく考えたら
これも映画「国宝」の影響か。
映画館の「国宝」は老若男女問わずだが
東劇の方はおばあさんばっかり。

歌舞伎は敷居が高いが
映画「国宝」を観て
「シネマ歌舞伎のお値段なら
私にも行けます」というところか。

映画の内容は玉三郎のメーキング映像や
解説などもあり、
舞台とは違う親近感もあるし
大アップで観る楽しさもある。

素人のばあさんが賑やかだが
まあ、良しとしよう。
(私が玄人とまでは言わないが)

東劇を出ると、
お次は大学の先輩の個展と
大学の同級生の個展にお邪魔した。

どちらかというとこれは
娑婆のおつきあい(失礼なヤツ)

ここからがメインの用事二題

ひとつは目下工事中の養清堂画廊の
進捗状況を確認しつつ、
個展に関する打合せ。

工事現場はだいぶ出来つつあり、
はるか見上げる先に
見慣れた緑色に白抜き文字の看板が…。

まだ、1階は火花を散らして溶接する
職人さんがいたりして
全然どんな風になるか分からない状態だ。

ただ、画廊ははるか彼方にあるので
ひょいと一見さんが覗く感じはゼロだ。

ビルの1階から4階までは有名な時計店。
隣のビルはカルティエ
その隣のビルはシャネル
推して知るべしな銀座並木通りの
5丁目5番地なのだ。

近くのオフィスにいる女性社長に会って
工事の状況や
個展の搬入、プレオープンなど
少し詳しい話を聴かせてもらった。

9月1日スタートの個展。
9月直前の搬入がそうでもなくなることが
分かり、
にわかに予定が前倒しになるらしい。
せっかちな私のお尻にいよいよ
火がつく感じがあり、ウキウキする。

最後は先日急に決まった友人の個展での
お茶のお点前の話。

この週末の3連休3日目の23日が
お点前の日だが、
昨日から友人の個展は始まっているので
どんな様子か下見見分。

友人の作品やコンセプト、
個展会場の一角にセットされた
茶室コーナーのお道具組など、
知っておいた方がいい。

それに合わせてこちらも着物の色や
格を決めることが出来る。
失礼になるのはもちろんよくないが
やり過ぎもよくない。

「無手勝手流なの」といっているのに
表千家では云々と言い張るのも
野暮というものだ。

大体の様子を理解し、
個展の主のKさんから
届いたばかりの本物の「いぶりがっこ」と
マリアージュ・フレールの
「カサブランカ」という紅茶のおすそ分けを
おみやげにいただき、
夕方の銀座から帰路に就いた。

「いぶりがっこ」と「カサブランカ」
何でもありの濃厚な個展と理解した。
その許容範囲の広さに驚く。

つまり、一服のお茶も楽しむことに
意義がある。
春まだ浅いとはいえ気温19度の予報。

ポカポカ陽気と
京都から取り寄せたお菓子が
きっと座を盛り上げてくれるだろう。

さて、私はどの着物にしようかな~。
Kさんのお軸は薄紫系だったから
小豆色なんかいいかな~。

そんな思いを巡らす時が
一番楽しいひとときである。
























2026年2月15日日曜日

始まりはいつも「雨」第2弾

 


















2月に入ってから、
2点ほとんど同時に試し摺りをとった作品の
2点目の本摺りを決行した。

11日は久しぶりにしっかり雨が降るというので
そこに照準を合わせて
1点目の本摺りをしたが、
それ以降はどこまで待っても
雨は降りそうにないので、
ピーカンの冬晴れの中、摺ることにした。

ピーカン対策としては
まず部屋のシャッターをおろす。
暗くなるけど、絵具の調合は昨日
明るい部屋で行ったので問題ない。

次に朝早く起きて
なるべく明るくなる前に行けるだけ行く。

というわけで、
本日は5時に起床。
5時15分にはアトリエで作業開始。

「朝飯前」にどこまでいけるか
自分とに勝負である。
何しろ、今日は気温18度で
桜が咲く頃の陽気という予報なので
乾燥との戦いもある。
暗いうちに行けるところまで行きたい。

結局、始まりの「雨」と
花びらや花芯など明るい色を摺って
約2時間。

ちょうど朝ご飯タイムになったので
ここでブレイクすることにした。

朝食後はエネルギーチャージができたので
力のいるパートに進んだ。
夕べ、いきなり少し色調を変えた空のパート。

昨日、試し摺りを眺めていたら
空がやけに明るいというか元気というか
子どもっぽい色だという気がしてきた。

「浅葱」(あさぎ)というきれいな空色の
グラデーションを予定し
絵具の調合も済ませていたのに、
急に何かが違う気がしてきたのだ。

昨日は3度目の「国宝」を観にいった。
どこまでも追及する芸の道。

大きな名跡を継ぐことになった喜久雄。
監督に「綺麗に見えることより
喜久雄でやって」と言われたという
吉沢亮のテレビのインタビューを聴いて、
今回の映画は喜久雄目線で観てきた。

1度目とも2度目とも違う目線で
3度目に観る「国宝」は
田中泯の演じた役の凄みに圧倒されつつ、
芸に命をかけた喜久雄の
「何もいらないから芸がうまくなるように」
悪魔さんにお願いしたシーンがささった。

本摺りで自分を追い込みたくて
あえて3時間の長丁場だけど
もう一度「国宝」を観た。

そのせいか急に空の色と脇の紺色が
気になってしかたない。

そんな風に試し摺りで決めた色を
本摺りで微調整することはよくある。
しかし、空のように大きなパートの変更は
作品全体のイメージに関わるので
冒険だ。

その冒険は朝ご飯の後、
船を出した。
写真では大した変更には見えないと思うが
空の色と脇の濃い紺色を
少し渋くスモーキーにしたお陰で
全体に落ち着いた印象になった。

「希望」というタイトルにするつもりなので
あまりスモーキーになってはいけないが、
先日、摺った作品とのバランスで
あまり明るくてカランとした空は
しっくりこない。

そんなこんなを独り言ちながら
午前中で摺りの山場を越えた。
昼食後に最後の黒を摺って
この作品のすべての摺りが終了だ。

木版画は明るい色から摺って
黒のように強い色は最後に摺る。
しかし、そこまでに摺ったすべての色が
最後の黒に負けないように
しなければいけない。

しかも、絵具は乾くと色が1段
明るくなるということを踏まえ、
色の調合をしなければならない。

水着と同じで
黒や黄色の水着はプールに入っても出ても
さほど変わらなけれど
ブルーや濃いピンクは水に濡れた時と
乾いた時では全然違う。

それと同様のことを考えつつ、
絵具を作り、摺っていく。
乾いてなんぼの世界である。

最後はベニヤ板に出来あがった8点を
水張りし、乾かすと
貼るそばからみるみる空の両脇の紺色が
白っぽく明るい色になる。

ネイビーブルーという絵具の宿命だ。

宿命を受け入れた上で
少し黒を足してみる。
はて、折り合いはついたのか。

喜久雄の気持ちになってみる。
「今、欲しいのは俊坊の血や。
俊坊の血をゴクゴク飲みたいわ」

「死ぬる覚悟が聞きた~い」トンッ
(キセルをつく音)

昨日観た吉沢亮の鮮烈なセリフを
脳裏に駆け巡ぐらせ、
アドレナリンを出す。

私には死ぬほどの覚悟はないものの
何とか本摺り、一丁上がり!

今宵は瀬戸際で背景色を変えた勇気に
乾杯しようと思う。
(また、乾杯?!)

お疲れした~!!



































2026年2月11日水曜日

始まりはいつも「雨」

 













毎日、冬晴れのピーカン天気が続き、
かと思ったら、先週末には雪が降った。

天気予報では11日の祝日だけが
雨の予報だったので、
だいぶ前からそこに照準を合わせて
本摺りの準備をした。

予報通り関東地方は夜明け前から
雨が降り出したので、
私はひとり嬉々として
5時には起きてアトリエに籠った。

そんなに早く起きなくても
1日の摺りで間に合うサイズだったけど
とにかく雨が降っている時が
摺り時なので
完全にお天気に合わせて動くことにした。

静かに呼吸を整え、
1版目の色を版木に置いていく。

1版目はまず明るい色からなので
「雨」のパートである。

ひと口に「雨」と言っても
5色使う。
絵具はすべて昨日のうちに調合済み。

「雨」のパートは細い線の上に絵具をのせ
それを和紙の裏からバレンで摺り取るので
力が要るわけではないが、繊細な作業だ。

「雨」が終わると次は「花びら」
白に近いピンクと桜色のグラデーション。
花芯の近くは明るい黄緑もおく。

そうやって木版は部分部分で仕上げていく。

摺ったばかりのパートのすぐ隣は
絵具が滲みやすいので
少し離れたところを摺りつつ、
適当なところを見計らって
体力のいる背景の「空」を摺る。

今回は珍しく「素鼠」という色名の
やや紫がかったグレーの空だ。
両脇の色が濃い「江戸紫」なので
初めてグレーの空にしてみた。
いずれもグラデがかけてある。
つまり4色使っているというわけだ。

グレーと江戸紫の組み合わせに
淡い色の雨の柄は、シックな色合いで
もしこの色と柄の着物があったら買うかも!

そんなことを考えながら
慎重に和紙の白を汚さないよう
しっかりとどの色も2度ずつ絵具をおいて
摺っていく。

全体にモノトーンコーデの中に
ピンクの蓮の花が
ポッと一輪咲いている。
そんな絵柄である。

数日前、ブログにあげた試し摺りは
この作品とのペア作品。
続けてこちらも試し摺りをとり、
何となくその流れで
こちらを先に本摺りすることにした。

そろそろ9月の個展のことを考えながらの
制作なので
2点並べるのか、離して飾るのか
いずれにせよ同じ大きさの作品は
共通のテイストで仕上げたいと思っている。

オリンピックの
フィギュアスケートではないが
「ノーミス」で滑り切りたいと
選手はよくインタビューで話す。

私も本摺りは「ノーミス」でと
心掛けていたので
その通りに摺れてますは一安心だ。

摺り終えた頃には雨もあがり、
また、明日からはピーカンの日々。
週末には気温も上がって
桜の咲く頃の陽気だとか。

とにもかくにも雨の日を有効活用して
本摺り終了。

何とか、危険因子の第四腰椎も
おとなしくしているようなので、
夜はお疲れ様のビールにしようと思う。

お疲れした~!!











2026年2月8日日曜日

雪の日の試し摺り

 










2月8日(日)
朝起きたら、夕べ降った雪が少し積もっていた。
とてつもなく寒い。

今日は選挙の投票日だが、
土日に関東地方にも雪が降るかも知れないとの
天気予報は知っていたので、
金曜日に期日前投票は済ませた。

みんな同じことを考えているらしく
投票所はぐるぐる長蛇の列だった。
きっとそうだろうと思っていたので
ひるむことなく15分ほど並んで投票した。

7日の土曜日は
今週は水曜日に人間ドックに行ったため
行けなかったお茶のお稽古に
振り替えで入れていただき、行ってきた。

帰りに寒いのでおでんのネタを大量に買い
夕飯はおでんをメインにしたので、
これで明日の夕飯まで
ご飯の心配をすることもない。

こうして、ひとつひとつ
すべきことを片づけて
今日からは新作版画の試し摺りと本摺りだ。

まずは和紙をカットするところから。

同じ大きさの作品が3点あるので
3点分の和紙を準備する。
美濃で梳いてもらった和紙を出してきた。
94×67㎝の大きさがあるが、
1枚からは2枚しかとれない。

相当、余分が出るがしかたない。
それはまた小品を創った時に使うことにする。

本摺り用の和紙を合計25枚カットし、
試し摺り用にも他の和紙から6枚分
カットした。

その間、テレビをつけていたのだが
NHK「プロフェッショナル仕事の流儀」の
再放送をやっていて
15代片岡仁左衛門さんの特集だった。

仁左衛門さんがまだ片岡孝夫だった頃、
私はよく坂東玉三郎とのコンビで
歌舞伎座に出ている仁左衛門さんを
観に行っていた。

「玉孝コンビ」と呼ばれ
美男美女のふたりは大人気だった。

そんな仁左衛門さんも今は相当歳をとられ
大きな役はもう体力的にできないという。
1か月の公演中、千秋楽を目の前にして
ふらつきを覚え体調不良でお休みした。

それでも這うようにして
千秋楽の舞台には立ったという様子が
画面いっぱいに映し出されていた。

花道を帰るその眼には涙があふれ
化粧した頬を伝っていた。

座右の銘は「手に入れるな」

追い求めているものを
手に入れたと思ってしまうと
その先の成長がなくなる。

だから手に入れたと思わず、
まだ手に入れていないと思って
精進することが大切だという。

和紙を切りながら、
折しも、芸術というものはそうして
「常に追い求めるもの」と
言われたような気がした。

自分はそこまで命がけというほど
版画に向き合っているわけではないが、
最近、第四腰椎すべり症が発覚し、
痛み止めを飲む毎日だし、
どこかでまた立ち眩みになるかもと
不安におののいているあたり
命がけと言えなくもない。

朝は止んでいた雪が
10時ごろにはしんしんと降りだした。
寒さのギアが1段上がって
めちゃくちゃ寒い。

しかし、雪の降る日は外の音がしない。
音が吸い込まれているのか
静かに自分と向き合うことが出来る。

お昼に昨日作ったおでんを食べ、
仕切り直しをしたので、
午後は3点の内の1点の試し摺りをした。

小ぶりの作品なので色数も少なく
メインに使いたい色から摺ってみると
他の色も自然に見えてくる。

全体のイメージが掴めると
試し摺りは案外、スムーズに進む。

「手に入れるな」と
さっき聴いたばかりの言葉を自分に投げ
細かい色のいくつかにダメ出しをして
別の和紙にそこだけ摺り直した。

はさみで周囲を切り落とし
のりで貼り付けてみる。
1度目の摺りよりいい感じ。

そんなことをいくつか繰り返した。
その後、絵具で汚れそうな彫りの甘い部分を
修正したり、
もっと飾り彫りでこうした方がいいと
思う部分を彫り直したりした。

試し摺りというのは
本摺りとは違う神経を使うので、
実は
最もアーティスティックなパートだ。

「彫り師」と「摺り師」は職人だが
その中継にあって「絵師」に近い。
原画を描く時の「絵師」とは違うが
色を決めたり、彫りにダメ出しをするのは
「絵師」の役目だからだ。

それこそどれだけ自分に
「手に入れるな」と指令が出せるか
試されている工程なので
たまたまつけたテレビにも
意味があったと感じる。

仁左衛門さんも千秋楽の舞台に立てたことに
涙していたが、
私も職業病ともいえる痛みや不具合を
なだめすかしてもう少し制作しようと思う。

夕飯は、おでんはまだあるけど、
ポークフィレのソテーと
ゆず大根でも作ろうかな。

そんなことを考えながら
一呼吸ついているところである。
(一服ではない)