2026年3月29日日曜日

白鷺が出てくる新作版画

 







利休忌も終わり、
3月もあと余すところ3日。
外はとても暖かで、正にお花見日和。

しかし、私は明日も明後日も出かけるので、
今日は1日アトリエに籠ることにした。

4月のミッションである新作版画の制作に
前倒しで取りかかろうと思う。

以前にも書いたが、
8月中旬に始まる個展のプレオープンと
同時に開催される「文学と版画展」のことを考え
また、6月初めのグループ展の案内状用の画像を
準備するとなると
4月末にはフォトグラファーの写真撮影が必要だ。

そこでプロに撮ってもらった画像は
個展開催予定の画廊で
8月半ばから販売や宣伝にも使われる。

更に出版社や新聞社への告知には
個展の1か月前にはDMを送るので、
それまでに準備してほしいと
要請があった。

となると7月半ばには
DMの印刷が終わっていて
画廊に届いていなければならない。

画廊の販売といっても、
そのほとんどが相手は海外の人で
お店やギャラリーに並ぶ作品を
直接見たお客さんが購入するわけではない。

SNSに載せたものを見て判断することになる。
となると、
解像度のいいちゃんとした画像データが
必須になる。

私が
個展で並べたりグループ展に出品予定の作品は
すべて4月末の写真撮影に間に合わせるとなると
意外と時間がない。
ワタワタするのは嫌なので
少しでも早く取りかかって
余裕をもって制作したいと思う。

そんなわけで、
「文学と版画展」のために創る新作の原画を
今日、立ち上げることにした。

今回の「文学と版画展」には
「白露に立つ」という小説を選んだ。
著者は住田祐(すみださち)

全く今まで読んだことのない作家で
名前からでは男性か女性かもわからない。
まだ若手の新人作家のようだ。

内容は比叡山延暦寺の修行僧の物語。
かなり難解でかなり難しい言葉で綴られている。
重たいテーマだけど、
読み応えのあるいい小説だった。

内容をよく吟味もせず、
本屋さんの平積みの台に並べてあった時、
タイトルの格好良さに惹かれて
手に取った。

山道を駆け上る千日修行の際に着る
白い法衣姿をシラサギに例え
その厳しい修行に立ち向かった男たちを
描いている。

実際の本の表紙は
日本画というか南画というか
モノトーンの山々の図が
装丁画に使われている。

しかし、それを自分の作品として取り込み、
白鷺をモチーフにして新作にしようと思う。

白鷺を描きながら
そういえば宮崎駿の
「君たちはどう生きるか」にも
白鷺は大切な役どころで出てくることを
思い出した。

彦根城は白鷺城とも呼ばれている。
(あまりに白いから白過ぎ城とも呼ぶ(笑い))

いずれも孤高の鳥・白鷺の意味するところは
死を思わせ、生きることを問いかけている。
少し、神様に近い鳥かもしれない。

愛らしい鳥ではないことは間違いない。
崇高なイメージだ。

そんなことを考えながら
鉛筆で原画を起こし、
余力があったので、
それをトレッシングペーパーに写し、
トレぺ原画も作成した。

手を動かしている間に作品全体の色味が
見えてきたので、
背景や鳥の立っている足場も
決めることが出来た。

きっと全体には重めの色調で
白い鳥が中央にすっくと立つような
凛とした作品になるだろう。

ここには何色といった花や背景の色味で
見えてきたものに関しては
注意書きをすでに書き込んだ。
原画の段階で全体の色味が見えると
とても作業がスムーズに進む。

これで4月に入ったら
トレぺ原画を版木に転写して
せっせと彫りの作業が始まる。

割合、大きめの作品サイズなので
彫りの作業も何日もかかると思うけど、
まずは絵師としてのパートが終わったので
一安心だ。

明日、出かける時には
今日、見損なった近所の桜を愛でつつ
お花見気分を味わうつもり。

ひとつずつミッションをクリアしつつ
桜を愛でるゆとりも紡ぎ出して
春の訪れを味わいたいと思う。

















2026年3月28日土曜日

2026年の利休忌

 












茶道の世界では、
利休さんの命日にほど近い3月下旬
”利休忌”という催しが行われる。

今年は27日の今日、
参加者6名とちょっと寂しい人数だったが
無事に開催された。

まずは利休さんに茶とうといって
献茶が奉納される。
その後は毎年少しずつメニューが変わるが
七事式の中からいくつか
いつものお稽古ではできない
お茶のゲームのようなお遊びをする。

今年は「廻り花」「廻り炭」「茶カブキ」の
3種が行われた。

「廻り花」は床の間にかけられた竹の花器に
参加者が順番に花を生ける。
竹の花器は3か所切り口があるので
3段に花が入る。

正客から順番に3人が生け終わると
4人目以降の人は全体のバランスを考え、
どこか1か所の花を抜いて
別の花を生ける。

そうやって6人の参加者が2巡するまで
生けることで
雰囲気が変わることを愉しむ。
茶花を生けるお稽古をゲーム化したお遊びだ。

「廻り炭」は
七事式の中でも難しいお稽古で、
炭点前のお炭のくべ方を学ぶために
考案されたもの。

亭主役が一番大変で
大きな素焼きの器を持って出て、
まずは炉の中の残った炭を上げ
灰を整える。
もちろん、すべてお作法に則っている。

その後、亭主とお客役の5人が
順番に前の人とは違う炭のくべ方で
炭をくべ、その景色を愉しむ。
次の順番の人は
前の人のくべた炭を逆の順に上げ、
自分は全く違うくべ方で
くべなければならない。

これも2巡することろまでくべるので
次第に
前の人がやっていないくべ方といわれても
打つ手がなくなるので工夫が必要になる。

着物を着た女性陣がぐるりを炉の周りに
座り込み、
炭を上げたりくべたりしながら
ああだこうだとおしゃべりしている様は
なかなか日常にはない光景だ。

「茶カブキ」はいわゆる「聴き茶」のことで
最初に2種類のお茶をいただき
次に本茶と呼ばれる3種類のお茶をいただく。

最初の2種類のお茶の味を覚えておいて
本茶の1番目2番目3番目がどれか
当てるというゲーム。

飲み比べるのではなく
本茶の1服目を飲んだところで
お茶名を書いた短冊を執筆に送る。

つまり、お濃茶を5杯立て続けにいただくので
なかなかカフェイン過多になるゲームだ。

今回はこの「茶カブキ」で
滅多にない珍現象が起きた。

6名の内ひとりは「亭主」なので
お茶を点てる人。
ひとりは「執筆」といって
結果を墨で記録する人なので、
「聴き茶」に参加しているのは4名。

その4名が3種類のお茶名を期した短冊を
集計したところ
なんと全く同じ答えになった。

そんなことになったのは前代未聞なので
これは全員が当たったと思って、
すっかりいい気になっていた。
ところが答え合わせをしたら
なんと全員がハズレだったというお粗末。

とんだ伝説の回になってしまった。

「執筆」の人が記録した奉書紙は
本来なら3種類とも当てた人が
記念にもらえるのだが
ひとりも当たらなかったので
先生のところに留め置かれることになる。

「なんてバカ舌な4人衆だこと」と
また来年の利休忌にも笑いの種を
蒔いてしまったことになる。

ちなみに
私はそのバカ舌4人衆のひとりである(笑)

雅でかつ愉しんでいる内に
お茶のお稽古ができるのが
七事式だ。

そんな風にいつもはお稽古の曜日が違う
お社中の仲間と会って、
談笑しながらお稽古をして
穏やかな桜咲く春の1日が暮れていった。

























2026年3月26日木曜日

久々のばぁばご飯

 












昨日はとても久しぶりに
長女宅に行ってばぁばご飯を作ってきた。

目的は長女が会合で夜遅くまで帰れないので
婿が帰宅する夜8時半までの
ベビーシッター。
以前ほどご飯作りを期待されているわけではない。

とはいえ、
ご飯のリクエストは
「真鱈のフライ」
「ポテトのチーズ焼き」
「鶏むねのチーズはさみ焼」
「春雨サラダ」
「けんちん汁」
の5品だったので、
他にも少し春野菜の料理を追加し、
バナナケーキを焼いて持っていくことにした。

出がけにスーパーにより
春キャベツやスナップエンドウ、新玉ねぎ、
トマト、ヤングコーンなどを買い求めた。

「春キャベツと春野菜のサラダ」
「新玉ねぎとツナのマヨレモン」を追加し
合計8品揃った。

やはり春野菜は彩りが若々しくて美しい。
たとえ、特別、必要がなくても
少し色味として加わることで
目にも鮮やかになるし
食欲も刺激する。

そんなわけで
スナップエンドウやヤングコーンも参戦。

娘は自宅でコーチングのセッションがあり
私が到着したとて
自室にこもってZOOM中。
イマドキの働き方はこういうものなので
私もそそくさとキッチンに立つ。

セッションが終わると
ふたりで遅いランチを採りながら
近況報告をし、
この春から孫1号は3年生、
孫2号は年長さんになることに感慨を覚える。

孫のためのばぁばご飯も7年ぐらいは
作り続けたことになり、
このマンションに引っ越してからも
何度、季節を繰り返しただろう。

お雛祭りやクリスマスなど
リビングに飾り付けた雛人形や
クリスマスツリーに合わせ、
行事ごとのお料理もたくさん作った。

もちろん食育として
季節ごとの旬の食材を使ったメニューも
あれこれ作ってきた。

そんな思い出が数々思い出されるが、
今回は「日本の春」がテーマである。

娘自身、自分の新たな仕事や
子育てに追われる中、
季節の旬などおかまいなしの生活なので、
少しはそうしたことも感じてほしい。

そんな思いで
「新キャベツと春野菜のサラダ」
「新玉ねぎとツナのマヨレモン」は作った。

例えそれは孫の口には大人びていて
食べられなくてもいい。
娘と婿には食べてほしいから。

「新キャベツと春野菜のサラダ」は
新キャベツ、新人参、ヤングコーン
スナップエンドウ、きゅうりが入る。
味付けはオリーブオイル、塩コショウ
レモンたっぷり。

ざく切りのキャベツときゅうりには塩をして
水がでたところで軽く絞る。
色も鮮やかになる。

ヤングコーンとスナップエンドウも
軽く茹でるので、色鮮やかになる。

それぞれのビタミンカラーが集結して
春がスキップしているみたいだ。

「新玉ねぎとツナのマヨレモン」は
我が家で目下、流行中。

新玉ねぎのスライスは水でさらして絞る。
ツナは油を切って混ぜる。
パセリは粗みじんに切って合わせる。

味付けはマヨネーズがメインだけど
我が家ではこれに柚子胡椒を加える。
そして、たっぷりのレモン汁投入。

娘宅では柚子胡椒は控えめにしたけど
お好みで増やしても美味しいと思う。
粒マスタードもいいかもしれない。
とにかく少しスパイシーにしたい。

新玉ねぎは孫たちにひと口勧めると
ふたりともちゃんとひと口食べた後で
「食べられなくないけど、ちょっと苦手」と
大人びたコメントを頂戴した。

そんなこまっしゃくれた言い方や
ちょっと忖度できる感じに
孫の成長を感じる。

新玉ねぎや新キャベツはともかく、
他の5品はとてもたくさん食べられたし、
バナナケーキは本当に嬉しそうに
お替りして食べてくれたので
ばぁばご飯のミッションは大成功だ。

毎週のように行っていた時には
気づかなかった孫の成長や
娘の仕事の進捗状況に変化があって
どこのおうちにも新生活が始まる春が
来たことがわかる。

私も3月末までに
新しいHPが公開予定だし、
個展の準備もいよいよ佳境に入ってきた。

目下、体は「くびれ強化月間」と称し
インナーマッスルを鍛えつつ、
もひとつ背中とお腹のお肉をそいで
くびれを手に入れたいと思っているところ。

こうして表明してしまうことで
自分を追い込むのも戦略のひとつ。

春、もうひとつギアをあげて
目的を達成するぞ!
おーっ!!

























2026年3月22日日曜日

「猫」の出てくるシンプルな作品

 

















我が街の桜が開花して
目下、2分咲きというところだ。

横浜の桜の開花発表は
だいたい東京より1~2日遅い。
東京の開花宣言が出ると
そろそろかなと思って
自宅付近の桜の枝を覗き込む。

私が勝手に標準木にしている木が2本あり、
家の近くの木は丘の上のせいか
駅前の大岡川沿いの木に比べ
少し開花が遅れるのが常だ。

昨日のカウンセリングに向かう途中に
2本の木を見てみると、
丘の上の方は1分咲
川沿いの方は2分咲という感じだった。

さあ、これで横浜の桜もいよいよ開花だ。

そんな中、今日は3連休の3日目だけど
シンプルな作品の2点目の本摺りをした。

前回のブログで書いたとおり
なるべくモチーフを最小限に絞って
「雨」を表現するシリーズだ。

この作品が私にできる
最もシンプルな作品で、
モチーフは「猫」1匹。

それもなるべくシルエットにして
顔がどんな猫だとか
猫の種類は何かとか
分からない状態で登場させたかった。

雨の降る日に
窓際でそっと外の様子をうかがっている。
ちょっと寂しそうな
それでいてほっこりするような猫。

きっと外には桜の木があって、
ちょっと咲き始めたのに
雨なので出ていけない、みたいな…。

今回は版数も少なく
小品で、画像の向きも同じ横方向なので
1枚ずつどこを摺ったのかが
分かりやすい。

実は2度に分けている部分もあるし、
そのほとんどは2度繰り返して
絵具を置いて摺るという作業をしている。

しかし、どこが変化したかは
この順番通りなので
「アハ体験」できるだろう。

色はいつものようにまずは「雨」
雨のパートが汚れなく
綺麗に摺れるとまずホッとする。
(雨でさえも2度摺っている)

そして、次は
摺りたてのパートとは離れた部分を摺る。
まだ、濡れているところに重ねると
その1mm重なったところから
絵具が泣き出す可能性があるからだ。

上を摺ったら、下にいき、
右を摺ったら、左にいく。
1版目を摺ったら、
時間を空けて2版目をのせ、
なるべく奥のものから摺っていく。

つまり、猫の2版目が最後のパート。

外はいいお天気で気温も上昇しているから
我が街の標準木も
昨日よりもうひとつ開花が進んだだろう。

きっと大岡川添いの桜並木には
大勢の花見客が歩いていると思うけど、
私は部屋のシャッターを下ろして
夜明け前から
雨降りの猫の作品を摺っていた。

タイトルは「あめふり」にしようかな。

きっとこの黒猫の見つめる先には
桜の花がほころびかけているに違いない。
そんな様子が見えてくる。
































2026年3月20日金曜日

「Simple is Best」かも

 


















個展を半年後に控え、
最終の作品リストを整える時期になった。

後2~3点新作を創るとしたらという観点で
何をどう創れば全体の統一感が出るか、
考えた結果、
「雨のシリーズ」で言いたかったことを
シンプルに描こうという気持ちになった。

自分の性格的には
せっかちで、ぎゅうぎゅう詰めにして
言いたいことはもれなく言いたいタイプだが、
それだといつも饒舌になってしまう。

数年前に実験的な作品を数点創って
検証した結果、
作品において
使う色数を制限し、形を単純化し、
引き算で構成した方が版画としても
いいのではということに気付いた。

新しいアプローチの作品は
概ね好評だったので、
ここ3年間はそのシリーズで創ってきた。

しかし、ここ最後の数点というところまで来て
もう1段ギアを上げ、
もっとシンプルにしたらどうなるだろうと
絵を構成するモチーフを最小限にしてみた。

つまり、「雨のシリーズ」なんだから
「雨」だけで絵を創れないかということだ。

私は抽象の作風ではないので、
「雨」だけで成り立つ作品は創れそうにない。

しかし、雨ともうひとつの何かだけで
シンプルに「雨」を表現したい。

そうして出来上がったのが
今回の「雨降りの窓辺」の2点だ。

今日、本摺りをしたのは
「雨と窓の向こうの紫陽花」
タイトルは「よひらのは」

「よひら」とは紫陽花の別の名前だ。
この2点はひらがなのタイトルにしようと思う。

日本語でいうなら
「漢字でもカタカナでもなくひらがな」
かな文字の流れるような美しさを目指している。

試し摺りを横に置きながら
今朝も5時に起床し、
本摺りに取りかかった。

絵具は昨日、調合してあるし、
和紙も湿らせてある。

いつもに比べれば色数も少ないので
さほど時間はかからないかもしれないが、
グラデーションの幅や
水のぼかし具合などを微調整し、
紙の白を決して汚さないよう
慎重に摺りを進めた。

実際、6時間ほどで
8枚完成したので、少し短時間で出来あがった。

1版目で提出しなければならなくなったとしても
2版目で提出しなければならなくなったとしても
どこで辞めてもいい感じであるよう、
8枚の湿した和紙をミスなく摺っていく。

この考え方は
浪人時代、油絵を描き進めていく時に、
いつ提出してもいいように描けた作品が
最後まで気持ちよく描けるし、
いい作品になるという講師の教えによる。

それは油絵であっても
版画であっても同じだ。

今回は版数としては10版ぐらいだと思うが、
床の雨のラインの下にもう1版入れて
下半分に陰りが入っている。

こういう作品は
明快かつ単純ではないように
こわざが必要になる。

しかもシンプルかつ短調ではないように
神経を使う。

出来あがった作品は
おしゃべりな私にしてはずいぶん寡黙で
スキっとしている。
「Simple is Best」かもしれない。

出来あがったばかりの作品には
作家の目に客観性がないので
自画自賛に陥る危険性がある。

しかし、今、
長年の懸案である木版画らしさとは何か
いい作品とはどういう作品かについて
ひとつの解答を得た気がしている。

昔、ダンナの転勤で香港に住んでいた頃、
大学院を修了してすぐだったが
誰にも意見を聴くこともなく、
師事することもなく、
ひとりで制作していた。

その頃は「私が苦労する分にはそれでいい。
大変でも自分が頑張れればそれでいい」と
版数や色数のめちゃくちゃ多い作品を
創っていた。

しかし、苦労したり頑張ったからといって
必ずしもいい作品になるわけではない。

今回の作品で
その答えが出たような気がする。

これは紫陽花展や個展で
鑑賞した方の反応を見るのが楽しみだ。

どんな道も奥が深い。
その道の先に
時折、希望が見えたり挫折したりするから
また、立ち上がろうと思えるのだろう。

さあ、この作品は
「希望」なのか「挫折」なのか、
とりあえず、絵筆と絵の具皿を洗おう。
お疲れっした~。