先週の水曜日は鎌倉八幡宮にて行われた
表千家茶道神奈川支部のお茶会に
行ってきた。
本日11月23日は都内某所としか言えないのだが
ある数寄者の邸宅で行われたお茶会に
主催者側の一員として行ってきた。
主催する側ともなると
朝4時半には起床し、まだ外が真っ暗な中
着物に着替え、
お手伝いのための着物用割烹着などをもって
家を出た。
ちなみに私の今日の着物は
「風神雷神の絵柄の訪問着に袋帯」だ。
同じお社中のメンバーと駅の改札で待ち合わせ、
そこからタクシーで邸宅に向かったのだが
鎌倉方面組は朝4時には起きたというので
お茶会のお手伝いは大仕事だ。
他のメンバーは別の日にお掃除にも来ているので
大変だなどとは言えないのだが
お茶会を開くというのは本当にエネルギーが要る。
この茶会のお茶席は2か所あり、
小間という離れになっている茶室ではお濃茶が、
私たちが担当した広間では
立礼というテーブルスタイルで薄茶が振る舞われた。
お客様は7組で1組8名。
時間差で来ていただき
順番に小間と広間でお茶を召し上がってから
最後に
別のお部屋でお弁当を召し上がっていただく。
小間の担当、広間の担当、お弁当の担当と
それぞれが前日までにお道具組や
お点前や水屋の人の配置と流れなど
準備しなければならないことは山ほどある。
そして、先週、美術館クラスのお茶碗で
お茶をいただけるなんてと狂喜していたが
今度はそれを準備してお出しする側になる。
道具だけではなく
お茶とお菓子ももちろん周到に準備し、
みんなに喜んでいただけるよう
季節やお茶会のテーマに沿って
席主といってその部屋の主催者が
いろいろ考えて趣向をこらす。
私たちの部屋の立礼のためのテーブルは
「シルクハット型立礼卓」といって
その数寄者の方がオリジナルで藝大出の作家に
依頼して作らせたもの。
普通の立礼卓とは少し形が違って
シルクハットの形を模し
両端がピンと突き出たデザインで
さび朱色の漆塗りで出来ている。
本当はそこでロングドレスを着た女性が
お点前をし、
周囲をバーカウンターのように人が座って
順にお茶を愉しむという目的で作られたという。
実際にはそのような茶会が催されたという
史実はないようで
亡くなって20数年後に
その立礼卓はよみがえり
ここにようやく陽の目をみたということだ。
シルクハットやロングドレスから想起される
異国の空気感を表現するため
水差しはロイヤル・デルフトの藍の染付
茶器は独楽塗り菊の絵吹雪
茶杓は黒いべっ甲
香合はビルマのフクロウ
花入れは琉球やちむん島袋常明作など
広間は遊び心にあふれたお道具組である。
小間は小間でまったく違うお茶室なので
お濃茶に合うお道具組になっている。
しかし、主催者側の人間は
自分の持ち場の運営に終始するので、
私たちは小間を覗くことさえ叶わない。
そんな中、お弁当だけは事前に注文し
お客様と同じ『柿傳』のお弁当を
いただくことができる。
といっても
持ち場の仕事と仕事の合間に
15分くらいでチャチャッといただくので、
ゆっくり味わえないのが悲しいところだ。
かつての邸宅の主である数寄者の名には
瓢箪の瓢の字があるのだが、それにちなんで
このお茶会には瓢箪の形のものが
どこかに隠れている。
しかもそれはかならず6つある。
瓢箪が6つで
「無病息災」の意味をなすのだが、
このお茶会のどこにそれが隠れているのか
探すこともひとつの楽しみになっている。
掛け軸の絵に描かれていたり、
お弁当の卵焼きが瓢箪だったり、
瓢箪の実のお漬物が入っていたりする。
小間の主菓子が瓢箪の形の薯蕷饅頭なのも
分かっている。
写真のお菓子は持ち帰った小間の主菓子と
広間の干菓子。
私たちのお席では
瓢箪の形の菓子器に「木守」という
柿あんを挟んだ焼き麩のようなお菓子を盛って
お茶を点てる前にお配りした。
(抹茶はお菓子を全部食べてからいただくもの)
あとひとつの瓢箪はどこにいたのか。
そんなことを思いながら
シフト表に添って忙しく立ち働く内に
7組のお客様を送り出し
気づけば庭に西日が射しこみ夕方になっていた。
お茶会は、顔出しNG
お道具の詳細公開NG
邸宅の場所限定NGと
規制が多すぎて残念なのだが
4回目のこのお茶会も無事に終わった。
日常とはかけ離れた非日常をお客様に
提供するのは本当に大変だと再認識したけど、
お客様の「いいお茶会でした」の声を聴くと
少しは疲れが癒される。
家に帰り、着物と帯をほどき
ふと足の裏を見ると
白い足袋がビックリするほど真っ黒に。
古い邸宅の中を1日中動き回り
お茶を点て、
お茶を運んだ証だと思った。
本当にお疲れ~。


















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