朝夕の冷え込みが厳しくなった11月19日、
鎌倉鶴岡八幡宮の境内にあるお茶室で
大寄せのお茶会が開かれた。
お席は3席あり、
表千家茶道の神奈川県、湘南同好会が主催だ。
朝9時に3席の内のひとつのお茶室の前に
同じお社中のメンバー7名と先生が集合した。
朝9時に着物を着て八幡様に行くには
それぞれ相当朝早起きをして
自分で着物を着付けでかけて来ている。
私は朝6時起きだったけど、
上野からいらしている方などは
きっと5時起きだったに違いない。
それにしても
1か所にぱっと見ただけでも100名以上のご婦人が
着物を着て集合している様は
何回観ても圧巻である。
私たちは参道からいくと一番奥のお茶席から
参加すると決めていたので、
一直線にそのお茶席に並んで
2席目に入ることができた。
なんと96歳になるという美しい老婦人が席主で
掛物から花と花器、香合
お釜・棚・水差し・主茶碗・替茶碗・茶杓など
お道具のどれをとっても銘品ばかり。
その上、そのどれもに箱書きといって
表千家茶道の家元のお墨付きのサインが入っている。
家元のサインとひと口にいっても
当代の家元なんかではない。
96歳ともなると
先代、先々代、そのまた前の家元だったりする。
(何しろ昭和4年生まれなわけだから
歴史上の人物とご縁があったかもしれない)
お茶席の撮影は禁止されているので
証拠写真が撮れず
私の浅はかな知識と記憶力では覚えきれないが
とにかく美術館クラスのお道具が
目の前にズラズラと並んでいた。
一度に46名ものおばさま達が席入りしているが
その筆頭の正客と次客になった方は
お点前さんが点ててくれたその家宝みたいな
お茶碗で実際にお茶をいただくことが出来る。
11月はお茶の世界では炉が切られ
お正月という位置づけなので、
どのお席も重厚かつ上品な中にも
華やかな雰囲気のお道具組でまとめられている。
2番目に伺ったお茶席は桐の白木の袋棚に
てっせんの蒔絵が目を惹く
女性らしくて華やかなお席だった。
その席のお席主は養老孟氏の奥様。
こちらもとても品のいい美しい方。
全般に華やかなものがお好み。
その席では我が先生が正客を
引き受けてくださったお陰で
私は次客のお席に座ることになり
仁清写しの永楽保全作のお茶碗で
お茶をご馳走になった。
正客のお茶碗は赤楽に金彩が施された「了入作」。
お席主はさらりと
「そちらは了入です」とおっしゃるが
いやいやいや、そのお茶碗で実際にお茶が
いただけるなんて…という世界なのだ。
もっと勉強していれば正確な名称を書くことが
できるのだが
会記といって席中に回ってくるお道具のお品書き
みたいな奉書を見ている時は
フムフムと思うのだが、
いざここに書こうと思ってもすこぶる自信がない。
そんな由緒あるあまたのお道具を
まるで毎日の普段使いかのように並べ、
その季節ごとの趣向をこらし
お客様をお迎えするなんて
お茶席をもつということは本当に大変なことと
今回のお茶会でもつくづく感じた。
茶の湯の世界の奥は深く
あまりにも現実の暮らしとかけ離れているけど、
「わたくし、着物でこんな風にお茶しながら
秋の一日を過ごしていますのよ」
なんていう非日常に身を置く幸せを感じた。
3席まわって、3服のお茶と3つのお菓子をいただき、
八幡宮の参道に出ると
急にお腹が空いていることに気付いた。
鎌倉で古くからやっているという中華屋さんの
個室で
全員、レディースランチなるコースを注文。
お隣さん3人はまずは生ビールとばかり
ジョッキをグビグビ開けている。
さっきまでの日本の雅な空間はどこへ。
しかし、また、これが現実。
美味しくコース料理をたいらげ
おしゃべりに花が満開。
日本の女は実にたくましい。










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