2015年4月11日土曜日

オブジェのレイアウト

 
 
 
いよいよ個展も開催まで10日を切った。
 
来週の土曜日は朝、額を業者さんの車に積み込み、
夕方には会場で搬入とセッティングが行われる。
 
一番の大物はオブジェ3組の作品で会場の正面の大きな壁に並ぶことになる。
 
オブジェ作品のコンセプトは
『人間の脳に刷り込まれた製品の既視感をちょっと変えるとどうなるか』
 
木製品と決まっているものと
木ではないと分かっているものの両方に
木目の和紙を張り巡らせ、すべてを木目で覆ってしまうと
不思議な感覚に陥る。
 
版画という手法は1枚の版があれば
複数同じものや色違いのものを産み出せるという
複数性が最大の特徴だ。
 
その複数性を逆手にとって、何種類もの木目の千代紙を作り、
あらゆるものを木目の作品に変えてしまう。
 
背景の木目にも手前の木目の椅子やテーブルが溶け込み、
平面的な錯視をもたらす。
 
背景に用意した色味は3種類あるが、手前に組み合わせるものによって
すごく溶け込んでしまう組み合わせと
浮かび上がる組み合わせがある。
 
ごそごそと和室のアトリエで背景と手前に置くものの位置を取り替えっこしながら
一番いい組み合わせを探す。
 
これにしようと決まったところで、パネルはまとめて大きな箱に戻し、
椅子や脚立はいつでも運べるよう部屋の隅にまとめた。
 
そうなると「オブジェ作品である」なんて気取っていたものが
急に木目の和紙をグルグル巻きにされた単なる椅子に成り下がる。
 
ニスで仕上げているとはいえ、もはや鋳物のガーデンチェアも
外に出して花の水遣りホースを置くわけにもいかないし、
ピッチャーに水を注ぐこともできない。
 
芸術作品なんてそんなものだ。
 
美術館にトイレを飾って「泉」というタイトルをつけても、
家に持ち帰れば実際のトイレにはもうならないのと同じだ。
 
ただし、かの有名なあのトイレは異様な高値がついて
芸術作品のまま未来永劫飾られるから
まったくもって運のいいトイレと言えるかもしれない。
 
私のオブジェ達はそんな栄誉に預かることもないだろうから
1週間、銀座のど真ん中でスポットライトを浴び、皆様に鑑賞していただいた後は
家に戻って「使えない奴」呼ばわりされる運命だ。
 
やれやれ・・・。

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