2022年8月11日木曜日

心理カウンセリングの手応え

 





今日は珍しく心理カウンセラーとして
手応えを感じる出来事があったので
お話ししたいと思う。

今日の午前中は2名の方のカウンセリングを行った。
ふたりとも3年以上通ってきている
おなじみさんだ。

私のカウンセリングルームでは
主に認知行動療法を用いて、
カウンセリングを行っているので、
ほとんどのクライアントさんが
1回来て1回話して終わりということには
ならない。

更に
このように長きにわたっていらしているということは
何か成育歴からの問題を抱え、
認知行動療法はもちろんのこと、
スキーマ療法という
より成育歴からヒヤリングし、
大きく自分を改造するような
セッションを受けているということになる。

そんなひとりのクライアントさんの話。
(もうひとりの方もスキーマ療法後半の方)

スキーマ療法は認知行動療法では解決しない
もっと根源的な問題を抱えているとわかった段階で
導入する心理療法だ。

彼女は目下、スキーマ療法の中盤にあり、
認知行動療法を2年ほど行った後、
スキーマ療法に移行したクライアントさんだ。

半年ぐらいかけた成育歴のヒアリングが終わり、
お父さんお母さんの子ども時代の関わり方と、
自分のものごとへの関わり方や感じ方などの
2つの大規模な質問票に応え、
本人の特性のレポートを手にしたところだ。

スキーマ療法というのは
子ども時代、主に親から刷り込まれた
価値観やこだわりの中で
「その考え方や価値観を持っていると
とても生きづらい」と思われることを
時間をかけてあぶり出し、
いずれ手放して、代わりに
ハッピースキーマという
その考え方や価値観を持っていれば
楽しく平穏に暮らせるというスキーマを
手に入れらるという心理療法だ。

その厄介なスキーマをあぶり出すのに
成育歴のヒアリングや2つの質問票が必要で
総合して、どんな状態にあるか
カウンセラーがその方だけのレポートを
作成する。

更に次の段階はそれを1枚の同定シートにし、
自分はどんなスキーマを手放したいのか、
どんな自動思考がこみ上げてきてしまうのか、
毎日の生活の中で観察する。

今日のひとり目のクライアントさんは
今、ちょうどここの段階なので、
自分の中にいるいろいろな人格に
名前をつけてくるというのが前回の宿題だった。
(認知行動療法もスキーマ療法も
セッションとセッションの間には宿題が出る)

人は誰しも、中心になっている平穏でフェアに
ものごとを判断できる人格と、
何かのかげんで急にスイッチが入って
別人格になるいくつかの人格をもっている。

例えば、子どもに対してイライラする時とか、
ダンナに対してムカつく時とか、
社会の人間関係で人と比較してうらやむ時とか、
それぞれ自分でも押しとどめられない
邪悪な人格が猛威を振るうということが
ないだろうか。

その邪悪な人格に名前をつけて、
日常で誰がいつ、どんな時に登場するのか、
そいつが出てくると、
家庭の中で平穏にフェアに過ごせないとしたら、
そいつを手放したいと切に願い、
そのためのセッションを行ったり、
空椅子の技法を用いて
子ども時代の自分を癒したりして、
代わりにハッピースキーマを
手に入れる必要があるのだ。

つまり、彼女はスキーマ療法の中盤、
平穏でフェアな自分と邪悪な自分の何人かと
向き合い、名前を付け、
誰がどのぐらいの頻度で登場するのか
正に経過観察するところにいる。

今日はその困ったちゃんの何人かに
実にぴったりくる名前がついた。
子どもに対し出てくるすぐ不安になる人格には
○○ちゃん、(子ども時代の自分の名前)
もうひとりの困った人格には旧姓の自分の姓、
夫に対し出てくる命令する人格には
「ヒットラー」
無理な要求する人格には
自分の母親の呼び捨てにした名前がついた。

また、
ヘルシーアダルトといって平穏でフェアな人格には
M’s〇〇(自分の名前で呼ばれる理想の私)と
呼ぶことが決まった。

こんな風に由来がはっきりある名前が
与えられることによって、
その人格が現れた時の自分を分析しやすくなるのだ。

今までのスキーマ療法経験者たちは
邪悪な人格について、
「ジャイアン」「般若」「ヒットラー」「帝王」など
外からの名称を持ってくる人が多かったが、
彼女はヒットラーを除いては
すべて自分の忌み嫌う過去の自分の名称を
持ってくることで、
心から手放したいと思える状況を作ったと言える。

「今までスキーマ療法をして、
いろいろなマインドフルネスのワークや
ヒアリング、質問票をやってきましたけど、
今日のネーミングをやってみて
いかがですか」と訊いてみた。

すると、彼女は
「今日はすごく目の前が明るくなったというか、
窓が開いて光が差した気がしました」と答えた。

よく目的や着地点がわからないまま続けていた
スキーマ療法に光明が見え、
何をしようとしているのかよく分かったと
いうことだろう。

それはカウンセラーとして、
とても嬉しい言葉だった。

スキーマ療法という
ディープで長い道のりをうまく導き、
彼女の人生に方向指示器を示せた気がする。

今後、実際に新しい価値観や人格を手に入れ、
歩いていくのは彼女自身なのだが、
伴走者として
彼女の心を軽くし、
前を向かせることができたのなら
そんなに嬉しいことはない。

今日はそんなカウンセラーとしての手応えを
感じた「美しい1日」だった。






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