2022年8月13日土曜日

彫りと音楽との相関関係

 













台風8号が関東地方に接近している。
まだ、静岡あたりにいるらしいが、
今日の夜半過ぎには関東に上陸するかもしれない。

外は急に真っ黒い雲に覆われたかと思ったら、
激しく大粒の雨が降っている。

こんな日は家に籠って
彫りの作業を進めるのが一番だ。

毎週、土曜日の午前中はカウンセリングが入って
テレビで「題名のない音楽会」を観られない週が
ずっと続いていたが、
お盆休みの今日は何も入っていないので、
久々にこの番組を観ることが出来た。

しかも、ゲストはショパンコンクール2位の
反田恭平とアレクサンダー・ガジェヴ。

なんという素晴らしい回を観ることができたことか。

番組では2曲ガジェヴが弾き、
1曲反田恭平が弾いたのだが、
それぞれが相手の演奏をどのように感じているか
話していた。

ガジェヴが
反田恭平のノクターン第17番の演奏について
「演奏が始まると冒頭から
静かな大きな湖の映像が広がって美しい」と
評していたので、
僭越ながら、私の音楽の聴き方と同じだと思った。

私もいい音楽に触れると、
必ず映像が脳裏に浮かび、シーンが変わる。
かなり色鮮やかに時代背景も分かるほどに
映像として見えてきて、
馬の蹄の音や、海の波の音なども聞こえる。

ガジェヴの脳裏にも
ノクターンの冒頭から
美しく水をたたえた湖の情景が広がると聞き、
いい演奏は多くの人に映像を呼び起こすのだと
確信した。

今、私は木版の彫りの佳境に入っていて、
いわゆる平彫りから
飾り彫りといって、草の1本1本や
花びらの表情など、
彫りでそのものらしさを表現するパートに
差し掛かっている。

私の理想は作品を観た方の脳裏に
何か音楽が聴こえてくるような作品を創ることだ。

音楽を聴いて、
好き勝手に映像が浮かび上がるように、
絵画を観て、
好き勝手に音楽が聴こえてきたら最高だ。

今、雨はたたきつけるように降りしきり、
時折、雷鳴さえとどろいている。

折しも、私の作品にも雨が降っているが、
紫陽花の色を鮮やかに染める
もうすぐあがるはずの静かな雨だ。

来週の金曜日は
石田様の5回連続のコンサートの4回目、
いよいよ『石田組』の登場だ。

たぶん石田組の演奏は激しく、
男性ばかりの弦楽器奏者のバトルのような
コンサートになるに違いない。

私は先日届いた格子柄の明石ちぢみを着て、
彼らの演奏を客席で迎え撃つつもり。

木版画の彫りという一言も発しない行為の裏で、
作家はいろいろ思いを巡らし、
イメージを掻き立て、
彫刻刀をにぎる指先に力を込める。

窓の外の雷鳴交じりの激しい雨。
反田恭平とガジェヴのショパンのピアノ。
石田組の男だらけの弦楽器の競演。

今日の私の脳裏には
つぎからつぎへと映像が浮かび上がり、
制作時間はまたたく間に過ぎた。

きっと誰も寄せ付けないような
怖いオーラが立ち込めていたに違いない。
























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