2022年12月7日水曜日

友人の形見の大島紬

 















今日は12月初回のお茶のお稽古日だった。

一昨日、
何を着ていこうかと着物ダンスを開けながら、
今年も師走になってしまったと
何だか感傷的な気分になる。

1枚のたとう紙を開くと
亡くなった友人の形見の着物が出てきた。

8年前の12月半ば、
脳腫瘍との戦いの末、
天国に召された友人から譲り受けた着物だ。

気丈な彼女は亡くなる2年ぐらい前から
身辺整理を始め、
着物や帯を整理する際に
「好きなのがあったらとっていいわよ」と
選ばせてくれた。

今日の大島紬はその時の1枚だが、
それは銀座の呉服屋さんに二人で出かけ
「その大島すごく似合う」と私が勧めて
彼女が求めたものだった。

1度仕立ててしまった着物や帯は
売れば二束三文なので
誰か着てくれる人がいるなら
もらってもらった方がいいと
気っぷのいい友人は何枚でもどうぞと
大盤振る舞いで太っ腹なところを見せた。

私はその時、着物2枚帯3本を選んだ。
そのうちの1枚が今日の大島紬の着物だ。

8年間も眠らせてしまったその大島は
黒地に薄紫で日本の古典模様が染めてあり
一部の模様の上に白い刺繡糸で
刺し子が刺してある。

泥臭い大島紬にしてはおしゃれな意匠で
手刺繍が美しい凝った着物だ。

袖を通すと友人は私より少し細身だったため
裄が短く、身幅もやや狭い。
スキニーな彼女が身にまとった痕跡のようで
彼女の面影がよぎって切なくなる。

帯は琉球紅型だが、
これは彼女と一緒に沖縄に
旅したことを思い出したから。

この帯はその時求めたわけではないけれど、
ホテルのイベントで琉球衣装を身に着け
ふたりで記念写真を撮ったことを思い出す。

そんなセンチメンタルな気分のまま
お茶のお稽古の前に
北鎌倉の古民家ミュージアムで開催中の
「パッチワークとアジアの刺繍展」を
覗いてみた。

林アメリーさんのパッチワーク作品と
パキスタンやスーダンなど
アジアの民族衣装を集めた展覧会だ。

特にパキスタンの黒地に鮮やかな色で
綿密に刺繍された衣装は
その精緻さと独特な色合いに驚かされた。

きっと少数民族の女性たちが
何年もかかって刺繍し、
お祝いの席や民族舞踏を踊る時に
身に着けたものだろう。

ぐるぐる会場を巡っていると
ブルーグレーの地に白い刺し子の
大きなテーブルクロスを見つけた。
偶然、
今日の紬の刺し子とコーディネイトした。

何だか彼女が「グッジョブ!」と
声をかけてくれた気がした。

あの日「この刺し子が素敵よね」と
呉服屋さんの座敷の鏡の前で
大島紬の反物を肩にかけた友人の顔が
ありありとよみがえる。

月日は流れ、
今年の1年もあっという間に
過ぎた気がする。

それでも着物という民族衣装は
流行りすたりもさほどなく、
デザインも変わらないので、
こうして友人の形見を
時を超えて身に着けることができる。

本当に優秀な日本の冠たる民族衣装だ。






























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