2023年4月6日木曜日

進化する本摺り

 










右が試摺り 左が本摺り
写真では分かりにくいがかなり色が違う







今日は先週、試摺りをとったポストのある作品の
2展開目の本摺りをした。

この作品は2点連作で
1点目は傘を差した男の子が
学校の帰り道に水溜まりで遊んでいるという図。

2点目は真ん中にポストがあり、
男の子が差していた傘が立てかけてある。
もしかしたら男の子が忘れたのかという感じで
物語性をもたせ
1点目と2点目が繋がるように作ってある。

ポストの作品の1展開目は
「わすれもの」というタイトルで
ポストと傘を主役にした作品に仕上げた。

2展開目の今回は背景の紫陽花の方が
主役で
紫陽花はもちろん背景の緑や草など
作った版の全部のせで
紙の白の部分は無しにした。

本来、私の版画はこのように彫った版は
すべて使って摺っているので
いつもの作品は紙の白をそのまま残すことはない。

1展開目と共通なのは
雨の色とポストの色なので、
まずは雨の部分から摺っていく。

次に黄土色の土の部分と
同じく黄土色とクリーム色のグラデで
空の部分を摺った。

試摺りはとってはあるものの
途中経過を気分よく進めるためには
常に色の響き合いを気にしながら
静かに静かに色数を増やし
エンジンの回転数を上げていく。

実はこの作品の試摺りでは
全体に似たような明度の絵具が多用され、
いわゆるモノクローム作品として見た時に
白い部分と黒い部分のない
中間色ばかりでできていることが
納得できずにいた。
色数も多過ぎのような気がする。

そういう場合は気に入っていないパートは
最後まで摺らずにいて、
色のイメージが固まるまで手を付けない。

この作品の場合、
紫がかったグレーの水溜まりの色と
背景の濃い緑が腑に落ちていない。
なので試摺りを見本にしながらも
修正を加えていく。

本来ならこういう作業は
試摺りを何度かとり、すべて決定してから
本摺りに進むのだが、
今回は小さめの作品なので、本摺り中に
こうした試行錯誤をしながら進めていった。

徐々に明るい色の部分を摺り進むうちに
はたと閃いて
背景の濃い緑を更に黒くして摺ってみた。
準備していた濃緑に更に黒を足す。

これでドラスティックに画面が変わり、
明暗のはっきりついた画面になった。

名画というのは、目を細めて見た時、
必ず白黒のバランスがいいものだと
大昔、先生に言われていたのを思い出す。

中間色ばかりで構成されている画面は
例え、色がきれいだとしても
メリハリがなく弱々しい作品になってしまう。

紙の白を生かした作品の強さは
そうした白黒のバランスがとれていることが
理由だと考えている。
紙の白というのはヘタな絵具の色より
よっぽどパキッとして美しいからだ。

そして、次に紫陽花の葉と花の色を決め、
ポストのダークな赤へと摺り進めていった。

最後まで悩んだのは水溜りの色。

試摺りで使った紫系のグレーでは
自己主張が激しすぎる。
しかも
画面を構成している色が多過ぎて
ガチャついている。

ここまでで6時間ほど。
朝からの作業でだんだん頭が疲れてきているが
水分補給をしてリセットする。

結局、水溜まりは
モノトーンのグレーの濃淡でいくことにし
置いてみた。

今回は「あじさい便り」というタイトルに
するつもりなので、
水溜まりは脇役でいてほしいのだが、
これですんなり収まったような気がする。

こんな風に木版の摺りの日は
1日中、アトリエに籠り、
ひと言も誰ともしゃべらず、
沈思黙考しながらひたすら作業している。

何とか夕方4時半には
6枚の作品が摺りあがった。

急に我に返ったように
昨日、
いただいた掘りたての筍を湯がかなければと
台所に向かった。

家にある一番大きな鍋と2番目に大きな鍋で
3本の筍を米ぬかで湯がいた。

その脇で今日の夕飯も作らなければならない。
本日の夕餉の献立は
「鶏むねのレモンクリームソース」
「じゃこのせレタスサラダ」
「生わかめの酢の物」
「菜の花のからし醤油和え」
「甘納豆入り黒糖パン」

和洋折衷の献立だけど、
健康第一、
黒糖パンをちぎってレモンクリームを
つけて食べると実に美味。
カロリーは高いと思うが…。

お供は今、CM中の196℃の梅酒ソーダ。
シュワシュワが五臓六腑に染みわたる。


































0 件のコメント:

コメントを投稿