2023年10月18日水曜日

版画協会 90回記念展

 










<第90回 日本版画協会賞>

協会賞の部分
電車の中になぜか熊がおり、その頭を
おじさんが足で蹴っている。















今年の版画協会の展覧会は
90回の記念展である。

9月の3連休のところで会員が集まり
協会の総会があり、
その場で賞候補に選ばれた作品の中から
今年の各種、賞が選出された。

版画協会は公平な投票による多数決で
賞が決まる。

コロナの時はちょっと違ったが
今年からは以前のスタイルに戻ったので
私も会員のひとりとして
総会に参加し、票を投じてきた。

幸い、自分が一番いいと思った作品が
集計の結果、
最高賞である協会賞をとったので
それが壁にかかっている様子を見なければと
上野まで足を運んだ。

もちろん自分も出品しているので、
何室の壁のどのあたりに掛かっているかも
確かめなければならない。

今年は会の創立90周年にあたる。
つまり、私が大学の3年の終わりに
初めて応募して、初入選を果たしてから
早44年なので、
ちょうど会の歴史の半分の年月、
この団体展に出品してきたことになる。

そう思うと、なんだか感慨深く
とても長い年月が経った気がする。

秋晴れの好天に恵まれ、
駅から都美術館までの道を歩けば、
学生時代に歩いていた頃と
同じ景色のようであり、変わったところもある。

当時から変わらないのは
都美術館の隣にある上野動物園で
今も幼稚園の子どもたちが遠足に訪れたらしく
列を作って歩く姿があった。
(ちなみに孫1号も今日は上野動物園に遠足)

遠くに東博の建物が見えているのも同じだが、
真ん中の広場には昔は噴水があった。
しかし今は催事場みたいになっていて、
今もテントの設営が行われている最中で
近く何かのイベントがあるのだろう。

その脇にできたスタバには
ここは外国かと思うほど
テラス席を外人が占拠し、
のどかな日本の秋を満喫していた。

一時はここら辺にブルーシートが林立して
浮浪者の村みたいになっていた時期もあるので
変れば変わったものである。

版画協会の内部の展示作品の傾向も
90年も経つと大いに変わった。

私が初入選を果たした頃は
作品の大きさもさして大きくなかったが、
その直後に、版画としては巨大な作品しか
賞を獲れない時代が続いた。

巨大な作品は美大に通っている学生か
美大で教えているか助手をしているかのような
恵まれた環境になければ作れないのが現実だ。

私も入選し、3回目の入選の時には
準会員になれたが、
その直後に結婚し、海外転勤で香港に移住、
子どもまで生まれたとあって、
巨大な作品を創ることはおろか、
作品を毎年、コンスタントに出品することさえ
危うい状況の中、
何とか、海外から作品を送って
父に額装・搬入・搬出してもらって
出品を続けたのである。

帰国後、いよいよ私も2枚はぎの大きな作品を
創れる環境が整い、
かなりの年月、大きな作品を協会展には
出品していた。

今回の賞を獲った第1室に並んでいる大きな作品は
みなそうした環境と若さと体力と気力の
充実した人たちが創ったに違いない。

一方、
時代を共にしてきたかつて大きな作品を
創っていた面々は
おしなべて以前に比べ小さな作品を出品していた。

それは全く他人事ではなく、
私も2枚はぎにしたくても
はぎの技術をもった額縁屋さんが
ひとりは亡くなり、ひとりは廃業したことで
創りたくても創れないのだから
時は流れたというか、
歳はとりたくないというか…。

90回の記念展ということで
いつもとは違う展示やイベントが組まれ、
会場に銅板とリトのプレス機があったり、
佐渡で行われた「はんが甲子園」の
作品と高校生の制作風景や授賞式の写真が
展示されていた。

20年前、私が会員に推挙された年、
会の会長をしていた大学時代の恩師と共に
佐渡に渡り、
泊りがけで「はんが甲子園」の審査員を
仰せつかったことがある。
(毎年、版画協会の会員から2名が
審査員として派遣される)

その時も全国から選ばれた高校生が
3人一組になって、2日間で、
大きな木版画を創るというスタイルだった。

時代は移ろっても
写真で見る限り、高校生の作品に取り組む感じと
出来た作品の素人臭さと泥臭さは変わらない。

きっとこの子たちの中から
将来の木版画家が生まれるのだろうと
思わせるあたりも変わらない。

あの頃、大きな作品を創っていた我々が
寄る年波には逆らえず、
小ぶりの手慣れた作品を出品し、
当時、泥臭くてへたくそだけど勢いがある、
そんな作品を創っていた人が
今はもっと洗練された作品で
協会展の壁に掛かっているのかもしれない。

90回という節目の次は100回か…。
そこまで私は木版を創っているだろうか。
版画協会の会員として出品しているだろうか。

そんなことを考えながら
昔を思い返しながら会場を歩き、
未来をちょっと憂うつな気分で想像した。






























 





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