2024年9月1日日曜日

旅行キャンセルの傷心

 






9月1日から4日まで
パティシエ学校の講師の友人と
3泊4日の旅行に行くはずだった。

今回は珍しくミステリーツアーという
行き先が伏せられた
でもホテルの様子や料理の写真、
遠景の景色などだけが紹介されている
パンフレットに惹かれて申し込んだ。

3か月ぐらい前に申し込み、
夏休みのバカンスはこれだけのつもりで
旅行の日がくるのを心待ちにしていた。

ところが、1週間前、台風10号が発生。
伊勢湾台風並みの大きさを保ちながらも
自転車程度のスピードで
ノロノロとゆっくり北上していた。

奄美大島や九州に上陸し、
大きな被害をもたらしている映像が
毎日、ニュースで流れてはいたが、
予報円もすこぶる大きく
一体、どんな進路を通って
関東地方にも来るのか来ないのか。

やきもきしながら
ずっと様子を見ていたが、
2日前になっても旅行会社からは
何の連絡もないので、
とにかく1泊目のホテルにさえ
たどり着けばどうにかなるだろうと
たかをくくっていた。

初日の朝、東京駅発の新幹線が
計画運休になりさえしなければ行けると
踏んで
3日前ぐらいからスーツケースには
用意万端、衣類やらおやつやらが
詰め込まれていた。

しかし、前日の午前中、
申込人の友人のところに
悲しいお知らせが届いた。
「今回の旅行は催行中止になりました」

え?そんなことってある?
台風とはいえ、今、雨も降ってないのに?
鈍行使って行くとかないわけ?

あまりにショックで
目まぐるしく思いが去来するが、
気が抜けて何も手が付かない。

あんなに4日間も留守することで
前倒しにやるべきことはやっとこうと
先々のことを考え、
準備したり、連絡したりしたすべては
何だったのか。

一体、何が理由で全キャンセルという結論に
なったのか。
全額返金するとなると
旅行会社も大打撃なんじゃないのか?

ミステリーツアーなんか申し込んだお陰で
どこの何がだめでキャンセルになったのか
何も知らされずに
それこそ、今となっては
ミステリーだ。

とにかく昨日の午前中は
ガッカリしすぎて
台風10号並みにウロウロしてしまった。

しかし、夕方には
来週から始まる「文学と版画展」の
セッティングのために銀座に行かなければ。

そのためには夕食の準備を済ませ、
お世話になった画廊のオーナーに
手土産を買わないと。

今回の装丁の詰めの部分は
すべてオーナーが色の調整をし、
デザインの微修正をして
印刷所に持ち込んでくれた。

例年になく手をかけてくださったので、
感謝の気持ちだけは伝えなければと思う。

結局、31日の午後から夜にかけて、
画廊では
旅行がキャンセルになったことは
誰にも告げずに
粛々と飾りつけの作業をして帰宅した。

悔しいから、旅行にいくはずだった友人とは
月曜日に銀座のレストランで
タイ料理のランチをする約束をし、
水曜日のお茶のお稽古の先生と友人には
「伺えることになりました」と連絡した。

何も予定を入れなかった日曜日、
外は時折、雨がぱらつくことはあるが、
旅行をキャンセルせざるを得ない理由は
どこにも見当たらない。

私は心を鎮め、
フジコ・ヘミングのCDをかけ
彫台に版木をのせて、
飾り彫りの下絵を描いた。

初めて手掛ける蓮の葉っぱの下絵は
最初はおずおずと
やがて緩急をつけた線が生まれ
版木の上で躍動し
どんな風に彫るのか私をいざなっていく。

9月の私の版画におけるミッションは
「4点分の作品の飾り彫り」と
カレンダーには書いてある。

今日は9月1日。
旅行でリフレッシュしてから
この作業に取りかかるつもりだったけど、
はやくも飾り彫りモードに突入したと
思えば、
「後は楽勝!」と考えることにした。









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