2025年7月5日土曜日

リハビリと病院食

 












6月26日に手術を終え、
翌朝、頭からチューブが抜けると
その午後には早くもリハビリが始まった。

リハビリは3種目ある。
PT:理学療法…足のリハビリ
OT:作業療法…手や生活のリハビリ
ST:言語療法…言語のリハビリ
の3種類だ。

この病院の患者さんの多くは
脳梗塞や脳出血、クモ膜下出血など
脳の血管が詰まったり破裂した結果
開頭手術をしたり、ステントを入れたりした
患者さんばかり。

認知機能の低下がみられる患者さんも多いし、
半身に麻痺を抱えている方も多い。
リハビリルームにいる方の半分は
日中もオムツをしているし、杖をついている。

その方たちの様子を見ていると
私の硬膜下血腫は確かに簡単な手術の部類に入るし
病気というより怪我をしたという位置づけだ。

それでも、術後に言語機能に障害が現れたり、
手足に半身まひが残ったり、
脳内の髄液も流れ出てしまうなどの影響で
頭痛やめまいなどの障害が出る人もいるらしい。

そのあたりに問題がないか、
3人のリハビリの担当者が毎日やってきて
いろいろなテストやトレーニングを行うのが
入院中のリハビリだ。

結果から言えば、
私には何の後遺症や障害も見当たらず、
直前に現れた左半身の運動機能の低下も
術後、
元の通りに左右均衡に動かせるようになっていた。

術後に現れるかもしれない頭痛やめまいなどの
不具合も何もなく、
あとは少し寝込んだために起きた
筋力の低下を
少しずつ取り戻せばいいという状態だった。

これで、もし、言語障害などが現れ、
ろれつが回らないだの
認知力に低下が認められたりしたら
即、仕事に影響が及ぶけれど、
全く問題なしだったので、
今しばらくは、これまで通り
舌先三寸でお仕事ができそうだ(笑)

入院中の楽しみといえば、
食事と言いたいところだが、
はっきり言ってその薄味と、
ご飯(白飯)の量の多さに比べ
おかずの少なさには閉口した。

いかに自分がいつも大量の食材を使い
贅沢に暮らしていたかが分かった。

一番最初に病院食を口にしたのは
手術翌日のお昼ご飯だった。

前々日の夜ご飯を
自宅で食べて以来の食事だったので
お腹はペコペコ。

運ばれてきたのは
豚汁と魚の切り身だった。
「ほら、豚汁だって」と弾んだ声で
看護師さんがお盆を運んできてくれた。

最後に温かいお茶をコップに入れ
「お替りもあるからね、言ってね」と言うので
勇んで豚汁を食べ
「お替りいただけますか」と訊いた。

「ごめんね。お汁のお替りはできないのよ。
お茶のお替りだけなの」という答えが返ってきた。

「お茶か~」
恥ずかしさとがっかり感が押し寄せてきた。

それにしてもおかずに対して白いご飯が多すぎる。
3日目、次女が来てくれるというタイミングで
しっとり系のふりかけとお菓子と雑誌を
頼んだ。

本当はふりかけをかけるのはいけないのかも
知れないが、
カーテンで覆われているので
秘密裏に食べることにした。
でないと、わずかなクリームシチューで
山盛りの白飯は食べきれないのである。

退院は抜糸のできる7月3日と決まった。
そこまではリハビリと血圧測定と
あっという間に終わる食事ぐらいで
やることがない。

3日目、談話室に行ってみると
本棚にずらりと漫画「JIN」が
全巻揃って並んでいた。

テレビで放映されていた時も
数年前のゴールデンウィークに
まとめて再放送された時も
夢中になって観ていたお話だ。

現代に生きる脳外の医者が
何の間違いか江戸時代にタイムスリップして
そこで医療器具や医療知識のない中、
いろいろ工夫して当時の人の病を治したり
手術をするという内容だ。

手に取ってみると
第2巻に早速、花魁・野風のいる置屋のおやじさんが
棚に頭を強くぶつけ、
治ったはずが2か月ぐらいして様子がおかしいという。

南方仁は「これは硬膜下血腫では」と見立て
江戸時代に調達できる器具を駆使して
硬膜下血腫のドレイン手術を行うという場面が
描かれていた。

「えっ、これ硬膜下血腫の手術じゃない」と
談話室でひとり小躍りし、
まずは漫画を写メし、
入院中にここの漫画を読み進もうと決めた。

自分の手術にどんな器具が使われたかは
分からないが
きっと頭蓋骨に1円玉大の穴を開けるには
この漫画のように
ぐりぐり何かハンドルを回し、
ゴリゴリ言わせて穴を開けたに違いない。

私の頭蓋骨にも同じように
弾痕のごとき穴が開いていて
現代はセラミックのボタンのような蓋が
かぶせられているのか。

江戸時代じゃなくてよかったなどと
バカな感慨にふけりつつ、
JINを10巻まで読み進めたところで
退院の日を迎えた。

退院の日の朝、
執刀医の先生が回診にいらして
封を切ったばかりのはさみで糸を切り
始めてみる器具で
ホッチキス上の留め具をふたつ抜いてくださった。

いずれもかなり痛かったけど、
これで晴れて下界に出ていける。

外は最高気温35℃の天気予報。
現実世界はむせかえるような暑さだった。




















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