2023年1月16日月曜日

藝大同級生の退官祝い

 















1月14日、週末の土曜日、
上野の藝大美術館本館で行われている
同級生の退官記念展に行った。

工藤晴也氏は2浪で藝大に入っているので、
今年で68歳。(今はまだ67)
藝大の教授は68歳が定年の年齢だ。

3月で定年になる直前、
この時期に藝大内の大きなギャラリーで
個展を開くことができる。

その案内が年の暮れに届いた時、
私はこれをネタに同窓会をしようと思いついた。

コロナがあってしばらくみんなとは
会っていない。

そもそも同級生といっても
油絵科は1学年55人しかいない。
当時は55人の内、女性はたったの10人。

その55人の内、
今も消息が分かる人は半分ぐらい。
すでに亡くなった方も3人か4人はいる。
(その1人も藝大先端技法の教授だった)

こういう時に一番頼りになるのはI君で
作品はともあれ、元ラグビー部で顔が広く、
石巻出身で石巻の観光大使もしている。

とにかく幹事役はI君が適任なので
その彼に連絡をとってもらうのがいいと思い、
「同窓会をしましょうよ。I君段取って」と
彼にお膳立てを丸投げしたら、
彼の知りうる20数名に声をかけてくれた。

当日は早めにまずは展覧会を観て、
会場で参加するメンバーが集まり、
上野広小路のレストランに移動することに。

まずは展覧会のあまりの会場の大きさに驚き、
そこにずらり並んだ工藤君の作品群に
圧倒された。

私にしてみれば彼は工藤君なのだが、
会場で会う工藤君は退官を迎えた教授先生。
話しかける学生やお客さんにとっては
きっと近寄りがたい存在なのだろう。
彼も教授の顔つきだ。

初期の作品は1986年あたりで、
その後、彼はイタリアに留学しているので、
当時の写真パネルや作品なども含め、
今日に至る壁画家人生の集大成がそこにあった。

藝大の油絵科は大学の3年になる時、
油絵と版画と壁画と技法材料に
専門が分かれる。
ちなみに私はその時版画を選んだわけだが…。

その時点で工藤君は壁画を専攻し、
大学院まで進み、イタリアに留学し、
帰国後しばらくして藝大に呼ばれ22年。
その間に制作した大小の壁画は
各種学校の壁、公共施設の壁、
ある地下鉄の駅の壁などに設置されている。

工藤君の膨大な作品は
大理石その他の鉱物でできているから、
この先、その建造物が取り壊しにならない限り、
ずっとそこに残る。

しかし、
歴史的価値があっても
中には取り壊しの憂き目に遭うものも
あるわけで、
3年前、
1964年の前回の東京オリンピックの時、
制作され設置された元の国立競技場の壁画が
今回の新国立競技場を造るにあたって
取り壊される話がでたらしい。

それを何としても残さなければと奔走したのが
なんと工藤君だったと聞き、
彼の壁画家として、
国立の芸術大学の教授として
何がなんでも成すべきことだと思ったという話には
とても感動した。

結局、その壁画群は
新国立競技場のすぐ傍に100mもの長さで
展示されているというので
近く観に行かなければと思った。

そんな立派な同級生も
場所を替えてお酒がまわるにつれ
下も滑らかになり、
長年の公務員生活の有象無象が飛び出し、
吐露する姿に
ようやく彼の肩の荷が降りたことを感じる。

それでもブログやFBの顔出しはNGだというから
やはり大学教授とは私たちがうかがい知れない
人から羨望されたり恨まれたりの
厄介な職業だったにちがいない。
(最近、刺された人もいるしね)

ともあれ、40年も前に散り散りになり、
めったなことで会わなくなったメンバーが
8名だけとはいえ一堂に会し、
旧交を温めることができたのは意義深い。

その8名、
同級生とはいっても特殊な学校だったせいで、
上は8浪だったKさんで73歳だし、
現役だったAちゃんは65歳で
その差は8歳もある。
まことにおかしな大学だと思うけど、
会えば、一気に昔の自分たちに戻るし、
当時の学び舎での出来事がよみがえる。

不思議な同級生たちが
学び舎近くの居酒屋でお酒を酌み交わし
また、それぞれの持ち場に戻っていく。

それがみんな遠い遠い。
工藤君は茨木へ、最年長は福島へと
帰っていった。

横浜の私と横須賀のT君はお隣さんなので
同じ方向の電車にのり、今更ながら
帰りの電車でLINE交換した。

昨今は死んでも家族葬なので、
葬儀で会うことすらないから、
私の投げた一石は
案外、貴重な思い出になるかもしれないと思う。

生存確認のためにも
作品は創り続け、
発表の機会にまた連絡しよう。

こうしてすっかり初老になったみんなは
最後まで~君、~さん(旧姓)と呼び合い、
上野駅のコンコースで手を振った。

































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