2023年8月16日水曜日

猛暑日の苦行

 










我が家は横浜のとある区の高台にある。

横浜というと、案外、聞こえはいいが
そのほとんどが、坂道とは
切っても切れない形状の土地である。

我が家もご多聞にもれず、
風光明媚といえば聞こえはいいが、
大抵の人が驚くほどの坂の上に位置している。

最寄り駅は横浜駅の次に
神奈川県では大きな駅なので、
デパートを始め、スーパーが何件かあり、
映画館まであるのでとても便利だ。

しかし、規模が大きく平地に拡がっている分、
その周囲の住宅街は
いきなり坂道を上ることになり、
盆地の底に駅前商店街があるというか、
家から駅までまずは坂を下り、
駅から家までは坂を上ることになる。

我が家の周囲には1本の坂道と3本の階段の
ルートがあり、
行きなのか帰りなのか、
荷物が重いのか軽いのかなどで使い分けている。
重い時は帰りはタクることも多い。

もちろん自分で車を出す場合は
ノーチョイスで坂道を利用するわけだが、
階段は、
1直線の140階段とよばれる
真っすぐでキツイ階段+坂道のルートと
赤白階段とよばれる紅白の手すりの階段
+坂道のルートと
大きなマンション脇をぐるりと巻きながら
坂道+階段で上るというルートがある。

写真はマンションを巻きながら
3段階に分かれて階段を上るルートで、
カウンセリングや買い物の後は、
このルートで帰宅することが多い。

こうして改めて写真に撮ってみると
坂道の向こうに夏の空があり、
入道雲が浮かんでいる。

その空に向かって1歩1歩上っていく図は
宮崎駿の映画あたりに出てきそうな
典型的な日本の坂道の風景だ。

登り切ったところで見渡すと
南側は眼下に駅前の高いビル群が見える。
北側は遠くにみなとみらい地区が見える。

まさにザ・横浜の住宅街という風情だ。

しっかし、この眺望を手に入れるには
あの坂道を上ってこなければならないわけで
この2023年の真夏の炎天下に
スーパーで買ったなんやかんやをエコバッグに入れ
階段の手すりを頼りに
1歩1歩上っていくのは
まるで修行僧のような過酷さだ。

3か月ほど前、
この階段で私は立ち眩みがして、
一瞬、意識が遠のき、
階段から転げ落ちそうになった。

手にはスーパーのアイテムが入ったエコバッグと
A4ファイルの入る大き目のバッグを持っていた。

重さを均一にするため、
自分のバッグの方には玉ねぎとグレープフルーツを
入れていたから、
それぞれ4~5㎏ずつあったと思う。

坂の第2弾に差し掛かり、
重いので一方を肩に担ぎあげようとした
瞬間、
「あ、空」と空の青が視界に入って
そのまま反転して尻もちをついた(らしい)

幸い、階段落ちにはならなかったが
右の二の腕の打撲と尻もちの打撲と
左のおでこに少しこぶができた。

どさっと物の落ちる音がしたので、
ちょっと前に通り過ぎて階段を下りていった
40がらみの男性が慌てて戻ってきてくれた。

「大丈夫ですか。頭打ってないですか。
救急車を呼んだ方がいいですか」と
心配して声をかけてくれた。

少しぽーっとしていたが、
頭を打った風はなかったので、
「大丈夫です」といってヨロヨロ立ち上がった。

男性は家の近くの坂道のてっぺんまで
荷物を持ってくれたが、
「家はすぐそこなので、もう大丈夫です」と
お礼を言って、戻ってもらった。

あれはまだ4月か5月ぐらいだったけど、
以来、あの同じ階段に来るたびに
「上を向いちゃだめよ」と自分に言い聞かせる。

階段で「上を向いて歩く」のは禁物だ。
つい、クラっと来やすいからだ。
もちろんお気軽に歌ってる場合じゃない。

こんな猛暑の中、
ひとり階段落ちして転がり落ちて
炎天下で熱いアスファルトに倒れていても
誰も助けてくれないかもしれない。

そう思うと
階段の一段一段を睨みつけ
しっかり踏み外さないよう上がるしかない。

そして、もうひとつ
夏になるとやらなければならない
ことがある。

それは庭木の伐採と草むしりだ。

我が家には三方に小さな庭がある。
南側は玄関アプローチのある植栽。
主には25年ものの薔薇の花というか大木?と
金木犀やジャスミンが植えてある。
北側は本来、物干しが置かれている
キッチンから出入りできる庭だ。
西側はカーパークとその奥の植栽で
アトリエから出入りできる庭。

玄関アプローチは、
人通りの多い道に面しているので
さすがに生えっ放しというわけにもいかず、
年に数回、手入れをしている。

以前は、ここにラティスを組んで
たくさんの花の鉢をハンギングで
ぶら下げていたから
毎日の水やりや花柄摘みなど
小まめに手をかけていた。

しかし、ここ数年、
花はほっといても勝手に咲く薔薇と金木犀と
ジャスミンと紫陽花のみ。

つまり、これらが手掛けた花の中で
ダントツ生命力が強く
手をかけずとも残ったということだ。

北側と西側は洗濯物を外に干さなくなって以来、
はっきり言ってジャングルと化している。

庭は人が立ち入らないとみると
植物の生命力は強くなる一方で、
特に植えた覚えのない蔓ものの植物が
地中をぐんぐん進み
庭中を侵食し
フェンスといい、物干し台といい、
自力で植えたさざんかや小でまりに
絡んで絡んで絡まり倒して伸びている。

草物としてはドクダミが最強で
ドクダミ草原と化している。

挙句、蔓ものは隣との境の電線にまで絡まり、
夏空に向かってどこまでも伸びているのだ。

キッチンからこの状況は
乗り出せば見えているので
気にならないわけではないが、
何しろ、今年の夏は7月すぐから猛暑日寸前。

梅雨時期の雨降りに伐採は出来ないし
あまりに暑い日では熱中症になるかもしれない。

7月に長女が見かねて
「業者を呼べば?プレゼントしようか?」と
言ってくれたが、
業者さんだって同じ人間だ。
この暑さの中、倒れられても困る。

今年の夏は向こう3か月
例年より暑いらしい。

そんな天気予報を聴くだけでクラクラする。

どこかで少しずつでも伐採しなければ。

これが毎年の夏の悩みだ。

結局、今年もお盆休みは
伐採に明け暮れた。

ちょっとはダンナも手伝ってくれたが、
ただ、北側の伸びすぎたさざんかを
チョキチョキ伐採しただけでは
埒が明かない。

切った枝はビニール袋が破けないよう
「袋に入れて何ぼじゃろーが!!」
と、思うが、呆れて言葉も出ない。

45ℓのゴミ袋8枚。
口が締められないほどパンパンに詰め
金曜日の普通ゴミの日に出す。
枝ものは紐で束ねる。
50cmの長さを越しているが
お目こぼしで一緒に持っていってくれ~。

この作業が終わると
私のお盆のおつとめが終わる。

横浜の坂の上に小さなおうちを建てたせいで
毎年毎年、
私には夏の修業が待っている。
















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