2023年8月9日水曜日

彫りの新しい試み

 









ここ数日、台風の影響か、
横浜でも1日の内、何回か
急に来る激しい雨が降っている。

台風6号に加え、7号も発生して
どうやらそちらは日曜日か月曜日あたりに
関東地方にも上陸の恐れがあるとか。

お盆に出かける予定にしている人は
気が気ではないだろう。
かくいう私も日曜日はコンサートに行く予定だ。

基本、人が遊びに行く時には
旅行などの遠出はせず
家にいることにしている私としては
他人事のようにニュースをみながら
今週はずっと彫りの仕事にいそしんでいる。

目下、手掛けている新作の版画は
2点同時に立ち上げ
2点同時に彫りの作業を進めており、
「平彫り」と呼ばれる作業が終わったところだ。

今週はいよいよ「飾り彫り」と呼んでいる
いわゆる表情をつけて彫る
木版ならではのパートに突入している。

花の花弁の2版目や
葉っぱの葉脈の縞々など、
一番デリケート、かつ木版らしさを出せる部分だ。

と同時に、飾り彫りが始まると
和紙の余白を鋭利な刃でカットし
必ずそこに紙を合わせてから摺る
ズレを防止するためのマーク「見当」も
彫っていく。

「見当」を彫るには「見当ノミ」という
専用の彫刻刀があるほど
その部分は正確さを求められるものなのだが、
彫りの仕事の中でも
「見当彫り」は最後の方に行うので
いよいよラストが近いという感慨もある。

実は昨日、その「見当彫り」を終えたので、
今日は紫陽花の中央部分の2版目の彫りと
葉っぱの葉脈を
絵具で直接、版に描く作業をした。

直接、筆で版木に絵を描くという方法は
木目シリーズの木目など
トレッシングペーパーでトレースした細い線では
出せない表情が欲しい時に行うのだが、
今回、紫陽花の葉では初めてやってみた描法だ。

今までの紫陽花の葉っぱは同じ版をふたつ用意し
2版目に葉脈を彫るという方法で
表現してきた。

新しい試みとして
葉っぱの部分は1版しか使わず
モノトーンにして、
彫った部分には紙の白が出る形に
しようと思っているのだ。

紫陽花で
色がつくのは花だけにしようと思っているので
そちらは複数、版を作り色を重ねる予定だ。

しかし、葉は1版だけなので
色ではなく、線の美しさで勝負だ。
そのためには描くように彫る必要があり、
線の勢いが欲しいので
直接、版木に下絵を描くことにしたというわけだ。

木目を直接、版木に描くときは
木目で使いそうな赤茶色あたりで下絵を描くが
今回は墨色にするつもりなので
イメージを掴むため
思い切って黒で下絵を描くことにした。

最初は下書き無しで黒い絵具で描くことに
やや抵抗があったが
徐々に調子が出てくると
線の抑揚がつくようになり、
完成した葉っぱが想像できるようになった。

あとは、この線に沿って
これを残す形で版を彫る。
版画は残った部分が版になる。

この作業が終われば、
この作品の飾り彫りがすべて完了する。

明日もまだ、時折激しい雨が降るらしい。

私は我、関せずで
アトリエに籠って静かに葉脈を彫り上げようと
思っている。
















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