我が家の玄関わきの金木犀が
満開になった。
例年、10月初めには咲き始めるので
今年は異常気象による暑さゆえ
20日も遅れたと思われる。
そんなまだ花の蕾もない10月初めのある日、
今年の夏、金木犀に巣を作った鳩が
帰巣本能があるらしく戻ってきた。
飼っているわけではないけど、
我が家を選んで巣を作って
無事にヒナがかえって巣立っていった鳩が
戻ってきてくれたことが嬉しくて、
思わず写真に収めてブログをアップした。
名前さえ勝手にポッポちゃんと
命名した。
かえったヒナはポッポちゃんの子なので
ポッポ子ちゃんである。
巣に帰ってきてくれたのは
目の周りが赤い鳩なのでポッポちゃんの方だ
(ポッポ子ちゃんの目の周りは黒い)
しかし、その数日後、
朝起きて、新聞を取りに玄関に出てみると
たたきに何本もの鳩の風切羽が散っていた。
小さな卵も巣から落ちて
グチャッと潰れている。
ドキッとして木を見上げたが
そこにポッポちゃんはいなかった。
その風切羽の散らかりようを見て、
きっとカラスに襲われたんだと思った。
その日から、もしかしてと毎日巣のあたりを
見上げる癖がついてしまったけど、
やはりポッポちゃんは戻ってこなかった。
無事でいるだろうか。
夏、初めて我が家に巣を作った時も
卵を巣から落としてしまったが、
その後、何日かしたら
ヒナがかえったので本当にびっくりした。
ひとつは落ちてしまったけど、
もうひとつ卵を産んで
ちゃんとヒナがかえったのだ。
しかし、今回の卵は落ちてしまったのではなく
落とされてしまったのだろう。
そんな危ない巣に戻ることはできないと
本能的に分かっているに違いない。
今朝、玄関ドアを開けると
金木犀の芳しい香りが
ふわっとまとわりついた。
小さなオレンジ色の花がぎっしりついて
そのひとつひとつの花から
秋の香りが匂い立っている。
ポッポちゃんの白い羽毛がふたつからまったままの
巣はもぬけの殻だ。
私には金木犀の花に埋もれるようにして
巣で卵を温めているポッポちゃんが
はっきり見える。
幻影だと分かっていても
そこにポッポちゃんがいてくれたらと
寂しい気持ちがこみ上げてきた。
これぞまさしく
「空の巣症候群」
我が子が自立してしまったり、
大切な人を失ったりした後に
襲われる寂寥感を指して
「空の巣症候群」と呼ぶのは有名だが
今まさに、私はポッポちゃんのいない巣を見上げ
「空の巣症候群」状態である。
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