旅の2日目は素晴らしい晴天に恵まれた。
秋の空は高く、突き抜けるように透き通っている。
2日目のメインイベントは「近江牛のフルコース」だ。
1日目の国宝・彦根城から一転、
2日目はバスは一路、岐阜の西濃地方に位置する
大垣城へ。
大垣城は以前は日本の百名城に数えられていたが
1945年の終戦直前にお城が消失してしまったせいで
名城リストから外れてしまったらしい。
現在、その後建て替えられたお城の中は資料館的
色合いの濃い展示になっていた。
大垣城は1日目の彦根城に比べ平地にあるので
お城にたどり着くのも中の階段も容易なので、
その分、ありがたみも薄れる感じだ。
この旅行のコースの中で、大垣城は
「近江牛への寄り道」みたいなもので
何と言ってもみんなの期待は牛肉へと向かっていた。
団体旅行の旅程に2時間もかけた
フルコースの食事が組み込まれること自体
稀なことだ。
近江牛は、神戸牛・松坂牛と並ぶ日本の三大牛の
ひとつだそうで、
しかも年間6000頭出荷される近江牛の中でも
13頭しか選ばれない最優秀賞を受賞した
チャンピオン近江牛を贅沢にフルコースにしたもの
とある。
料理に提供される近江牛には
認定書なる証明書が発行され、
個体識別番号・生産地・生産者・品種・性別
出荷月齢・格付け・と畜場・と畜日が
記されている。
きっと28か月間、大事に育てられた牛には
名前もついていただろう。
それを私たちが美味しくいただくことが
家畜の牛にとっての幸せと言えるのか
何だかとても微妙な気持ちになった。
しかし、そんなことを考えるいとまもなく
バスは鉄板ダイニング天満というレストランに到着。
私たちは10名ずつに分かれて鉄板を前に
テーブルについた。
このレストランは
近江牛の1頭買いをウリにしているので、
普段は口にできない希少部位もあますことなく
いろいろなお料理にして出してくれる。
ファイヤーパフォーマンスで場を盛り上げ、
次から次へと提供されるお料理と共に
2人で1本頼んでしまったボトルの赤ワインを
グラスに2杯3杯といただくうちに
お腹は満杯、かなり苦しいほどになってきた。
そこから、バスで愛知県の豊川稲荷まで移動する間
私たちはお腹をさすりながら
眠ることさえできずに
ただ、近江牛が少しでも消化するのを待っていた。
1日目の日本の伝統美を鑑賞し、
伝統食に舌鼓を打った雅な体験に比べ、
何か釈然としないものを感じながら
人間の欲の深さはつくづく罪深いものだと思った。
きっと個人でこのフルコースを食べに来たら
かなり高額なお食事だったと思うけど、
今の私にはもう少し滋味深くて
丁寧に作られたお料理の方が
心穏やかに食べられる気がした。
2泊目のホテルは浜名湖の湖畔にたたずむ
オールインクルーシブの外資系ホテルだった。
シックなデザインの部屋といい、
質のいい寝具といい、
温泉の湧き出る露天風呂といい、
ホテルの格としては1泊目より上等だった。
お料理もビュッフェスタイルの晩ご飯と朝食
だったけど、どちらも和・洋・中が充実し、
ライブクッキングで提供される鮎の天ぷらや
サーモン・ベネディクトなどもとても美味しかった。
3日目。静岡・牧之原のお茶の工場では
7段階ある抹茶アイスクリームの1番濃い7番を
食べてみたが
甘み控えめで抹茶の味が濃厚で
これまた、美味だった。
最後のランチは
老舗のうなぎ屋さんのうな重だった。
こちらもたれが甘すぎず
ふっくらした鰻で
思わず店名をメモするほどの美味しさだった。
結局、「かわいそう」とか「もったいない」とか
「もうお腹いっぱい」などと言っても、
食べてしまうのが人間の業。
「美味しいものはやっぱり美味しい」
そして、食べ過ぎては二人とも
「帰ったらカーブスに行って取り戻さなければ」と
言っているのだからあきれるばかりだ。
とはいえ、時にはこんな贅沢もありかもと
言い訳をしながら
日本全国、うまいもの巡りをした気分だ。
(揺れ動く女心と秋の空)
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