最近は創っていなかった大きな正方形の作品の
本摺りをした。
テーマは『光と影』と『表と裏』
人生長くなってくると
光が当たっている時ばかりでもないし
表通りだけを歩けるわけでもない。
時には思いがけないアクシデントや
不幸に見舞われる事さえある。
人生は「禍福あざなえる縄」だということを
実感する。
この作品は
来年9月初めを予定している個展の
メインの壁に飾るつもりだ。
大きさは和紙の大きさで90×90㎝
作品のイメージサイズで80×80㎝
額の大きさは102×102㎝
いつも福井県で梳いてもらっている和紙では
間に合わないので
10月に入って千石にある和紙屋さんまで
買いに行った和紙である。
1枚2750円の100%楮の和紙だ。
作品自体は7月に入ってから原画を起こし
2点対の作品として創ることにした。
なので、原画も2点同時に、
トレッシングペーパーの原画も
版木転写も2点同時に行った。
そうしないと微妙なバランスが狂うからだ。
版木転写には当然90×90㎝の版木が必要なので
いつもなら90×60㎝にカットしてもらう
版画用の板を
90×90にカットしてもらい4枚用意した。
(両面彫りななおで8面ある)
それを来る日も来る日も
8月9月の真夏日と猛暑日が続く中
彫り続けて、9月下旬に2点分彫りあがった。
10月には2点の内、1点の試し摺りと本摺りを、
11月にはもう1点の試し摺りと本摺りの予定だ。
せっつかちな私は大昔から
こんな風に予定を立てては
予定の段取りより少し早めに終わって
余裕を愉しむのが常だったが、
なんのなんのこの大きな作品は
本当に丸々1ヵ月試し摺りと本摺りにかかって
しまった。
本摺りにはこの日・月・火の3日間割り当て
最悪、火曜日中に仕上がれば良しとしていたが、
何とか半徹夜を含め
日・月の2日間で摺りあがったので
明日の火曜日は余裕のよっちゃんである。
それにしてもこんなに制作に長時間かけ、
すっかり高くなった版木を彫り、
これまた高くなった和紙に摺り、
丸4カ月もかけてたった3枚しかできないなんて。
しかも、この作品を発表したからといって
観ていただける人の数も知れているし、
売れる当てもない。
とてもとても非効率。
と、ついつい愚痴っぽくなる。
今回は本摺り用に4枚の和紙を湿した。
作品が大きいので1度に摺るのは
4枚が限界だと思っていたのに
1日目の昼過ぎ、
和紙の湿しに使った霧吹きの水で
作品中央の絵具が泣き出し(染みだすこと)
1枚をやむなく途中で破棄する不幸に見舞われた。
絵具が泣き出した場所が
中央の紺色の三角形のところで、
その脇は和紙の白を活かした部分だったので、
他の色でつぶすわけにもいかず
泣く泣く破り捨ててしまった。
絵具も泣き出したが、
泣きたいのはこっちの方だ。
何十年も木版画を創ってきても
まだ、こんな失敗をする自分が情けない。
今回の本摺りで
90×90㎝なんていう無謀な大きさは
体力的にもう無理かもと感じた。
よく絵描きが高齢になると
どんどん絵がシンプルになるが
それは人生に達観したからとか
余分なものがそぎ落とされたからではなく
単に体力の限界なのではとさえ思う。
1日目の予定が終わり、ベッドに入ったのに
もぞもぞ起き出して
夜中に少し作業を進めたりする気力は
まだ残っているが
物理的に大きな作品は動きのひとつひとつが
大きくなり、重くなるので、
もうこの大きさが限界なのかもしれない。
何とか3枚は最後まで摺り終えたけど
もう1点、対の作品の版木がある。
11月はその作品の試し摺りと本摺りを
予定している。
さあ、しばし休憩をとったら、
また気持ちを切り替えて取り組むとしよう。
あんなに一進一退だった体重が
この2日間で1,2㎏も減った。
嬉しいような悲しいような…。
摺りは体力勝負なので、
また、モリモリ食べてから
挑戦だ!























0 件のコメント:
コメントを投稿