2020年12月11日金曜日

年賀状作成の季節

 





1年で一番憂うつな季節になってきた。

12月の中頃、年賀状を作成しなければならない。

写真を選んで、どうレイアウトしようか、
今年は出かける機会がほとんどなくて、
いい写真が撮れていないなど、
ファミリー写真で年賀状を作ろうという人は
それはそれで悩むと思う。

しかし、私は毎年、
木版画の年賀状を彫って、摺って、
あて名書きも自筆で書いて出している。

あて名書きは「なんとか名人」みたいなソフトがあることは
分かっている。
けれど、裏が手摺りの作品なのに、
あて名が印刷ではバランスが悪い。

最近は版画家仲間もこの作業が大変すぎるので、
印刷にしてしまう人が相当増えている。

中にはあて名書きどころか、
版画の作品の部分まで、印刷にしている人もいるぐらいだ。

何が大変かというと、
はがきのサイズが小さいので
作業がチマチマしてやりにくいこと、
はがきの絵具ののりが著しく悪いことの2点だが、
何よりそんなに大変な思いをしても、
誰もそれほど大変だと思ってくれないことが
一番報われない。

毎年、まずは絵柄をどうするか、
干支をテーマにしているので、
干支は入れなければならないけど、
自分の作品らしさも欲しい。

全く干支には触れずに
自分の小品として年賀状を制作する作家も
たくさんいる。

それはそれで、
コレクターさんだったりしたら、
ただでその人の小品が手に入るわけだから、
ラッキーと思うのだろう。

私の場合は、そういうアプローチをしてこなかったので、
今更、急に小品ですからというわけにもいかない。

11月半ばぐらいから、
頭は「牛、牛、牛ねぇ~」と牛でいっぱいになり、
単に牛のシルエットとかではなく、
どこか自分らしくしたいと
悶々とする。

11月、茶道の世界では
「口切」といって、お茶壷の封を切って、
新しいお抹茶をいただく。

11月はお茶の世界ではお正月。
「炉開き」といって、
お点前も風炉から炉へと移る。

お稽古では「壺飾り」という飾り物の稽古があり、
お床に飾られた茶壷を拝見する作法を勉強する。

その時、壺の口には口覆いという布をかぶせ、
朱の紐で結んであるのだが、
その結び方にもいろいろあって、
流派によっても違うというお話になった。

複雑な結び方にするのは
毒を盛られないようにという理由があるというのは
怖い事実だが、飾り結びの見た目はとても美しい。

お稽古では
先生がお持ちの結び方を示した壁飾りを見せてくださり、
後日、社中の仲間が結び順を示した図を
LINEで送ってくれたりした。
(皆さん、勉強熱心!)

そんな流れから、ふと思いついて、
水引で作る亀や鶴など、
御祝ごとに使われる日本の伝統・水引について
検索してみた。

すると、うまい具合に
牛の顔を水引で表現したものがみつかり、
瞬時に「これだ!」とひらめくものがあった。

これが自分らしいかどうかは怪しいが、
図柄としては
その水引を中央に配置して、
牛模様を背景に…などと、すぐに全体像が思いついた。

例年、一度、思いついた図柄を彫っては
ピンと来なくて、
別の図柄を考えて、また彫り直すということもあるので、
自分の中で一発オーケーが出るのはうれしい。

だから、今年の彫りと摺りの作業は
例年に比べ、スムーズだ。

とはいえ、一体何枚準備すれば、
事足りるのか。

今年はなぜか喪中はがきが極端に少ない。
毎年、14~15枚は来ていたのに、
今年は5枚しか来なかった。

もはや私の友人知人の親御さんは
皆さん、天国に召されたということか。

さあ、週末には版画の摺りを終え、
同時に2021年用の名簿を作らなければ。

さて、今年は何枚用意しよう。
150枚ほどか。

そろそろ、全く何年も何十年もお目にかかっていない方を
名簿から外さねば…。
と、毎年、思う。

でも、コロナで誰にも会えなかった1年を思えば、
せめて年賀はがきで繋がっていようか。

日に日に寒くなるこの時期、
悩ましい作業を続けながら、
この1年を振り返っている。







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