2020年12月6日日曜日

麗しのタンゴ・コンサート

 






旅行から帰ったあくる日、
ダンナの呆れた視線を感じつつ、
みなとみらい大ホールのタンゴ・コンサートに向かった。

「三浦一馬キンテート」と題された
タンゴ五重奏楽団の演奏である。

キンテートはスペイン語だが、
英語でいえば、カルテット、
つまり、五重奏という意味である。

5人編成のバンマスは
いうまでもなくバンドネオンの三浦一馬なのだが、
私のお目当ては
一馬君ももちろんだが、
ヴァイオリンの石田様こと石田泰尚である。

このコンサートは本当は5月に予定されていたものが、
コロナで大幅な延期を余儀なくされ、
12月になってしまった。

なのに、世の中のコロナ情勢は
5月の時より更に悪化し、
一体どうしたものかと考えたが、
やはり2020年の最後に
石田様と一馬君に会いに行かなければという
誘惑には勝てず、
出かけることにした。

みなとみらい大ホールのある桜木町は
クリスマス一色に染まり、
いつにも増してイルミネーションが美しい。

夕方6時開場の30分ほど前に
ホール手前のカフェに小腹を満たそうと立ち寄ると、
相当大きなカフェにもかかわらず、満席。

そして、大ホールは客席数2020席という
大型ホールにも関わらず、約7割の入り具合。

ギョッとするほどの人出にいささか驚いたが、
自分もそのひとりなので、
何とも言えない。

延期になった夜の公演なのに、
これだけの人は
一体だれがお目当てか、
タンゴのコンサートそのものとも思えないが…。

しかし、コンサートが始まるとそれはほどなく判明した。

最初に登場した三浦一馬君は
もちろん大きな拍手で迎えられ、
聞こえはしないが黄色い声援が聞こえたような気がする。

続いて、ギター、コントラバス、ピアノの3人が入場。
今回の編成は若いメンバーを登用、
特にピアノの高橋優介君は若干26歳。

4人が舞台に揃ってからのオオトリ登場で、
石田様なのだが、
会場はすでに大盛り上がり。

おばさま・おばあさまのお目当ては
どうやら石田様だったようだ。

曲目は1部がネストル・マルコーニのもので
2部がアストル・ピアソラの曲。

マルコーニは一馬君の直接の師匠で、
彼の弾くバンドネオンは
マルコーニから譲られた楽器であることは有名だ。

マルコーニの曲は日本人にはあまり
なじみがない。

私も知らない曲が多かったが、
さすがにタンゴの巨匠マルコーニの
タンゴイズム満載のリズムは心地よく、
赤いドレスの女がヒールの音をたてて踊るのが脳裏に浮かぶ。

一方、ピアソラの曲は個人的にはなじみ深い曲が多く、
マルコーニを昼とするなら、
夜のしじまをさ迷い歩くような、
どこかみだらな気分になる。

きっとそれは石田様のヴァイオリンのせいだと思うのだが、
いつにも増して、
切なく・色っぽく・身もだえするような音色だった。

久しぶりに聴く一馬君のバンドネオンも
みなとみらいホールの音響のせいか、
結婚してますます充実しているせいか、
自信に満ち、堂々として、
成長著しいと感じた。

他の3人の演奏は初めて聴くメンバーだったが、
タンゴ特有のソロ・パートのアレンジが個性的で、
特にピアノの高橋優介君は
個人的には新しい注目株として追いかけたい演奏だった。

以前、タンゴに憧れて、少しダンスを習いに行っていたが、
男性のリードに合わせてしか踊ってはいけないと知り、
私向きではないと思って、数年でやめてしまった。

しかし、こうして心地よくて色っぽいタンゴ演奏に
身を預け、
自分が赤いドレスを身にまとった気分で妄想するのは
密かな楽しみとしてやめるわけにはいかない。

コロナにかかったらヤバそうなご高齢のおば様たちも
会場を埋め尽くしていたが、
もしかしたら、同じ思いでいたかもしれない。

隣に座っているのは白髪のダンナ様だとしても、
心は一馬君や石田様に酔いしれ、
胸をキュンキュンさせているのではと思うと、
会場の温度が上昇したような気がする。

ひとりで聴きに来ていた隣のおばさまは
完全に石田様ファンだったようで、
盛んに大きく拍手し、
石田様のちょっとしたしぐさに反応して笑っていた。

アンコールも終わり、会場が明るくなると、
思わず私と顔を見合わせ、
「よかったですね~」とマスク越しに歓び合い、
多くを語らずとも、
今宵のひと時を存分に楽しんだことが伝わってきた。

音楽は素敵!
タンゴは中でも一番好き!
石田様と一馬君サイコー!

2020年、
ラスト・コンサート終了。






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