2024年7月16日火曜日

この本の装丁を手掛けるなら

 







6月の紫陽花展が終わると、
次は9月初めの「文学と版画展」のために
本の装丁のデザインに移る。

新作の原画を作成したり、転写したり
彫り始めたりの作業と同時進行で行うので
頭が混乱するが、
装丁のデザインをおこしたら
それを実際に本のカバーの形まで
印刷してくれるのは別の人なので
私はなるべく早く入稿しなければならない。

「文学と版画展」のメンバーにいれてもらって
早8年ほどになると思うが、
その間メンバーが半分ぐらい入れ替わっているが
固定メンバーの装丁のスタイルは
かなり決まってきている。

本の装丁を見れば、
版画家が誰かと分かるという意味で、
皆、自分のテイストを固め
既存のカバーとは全く違う装丁を考え
制作してくる。

最後のカバーの状態になるまで
自分で作る作家さんもいるし、
私のように自分ではラフデザインと
タイトル文字だけ作って、
作品データはプロの写真家、
デザインの微調整と印刷は印刷屋さんという
タイプの人もいる。

私の場合は
本のタイトルを自分の毛筆で書く、
装丁の画面全体を自作の版画にする、
この2点がスタイルとして定着していて
ラフデザイン画を実寸大で描き、
2Lにプリントした写真で作った
ミニチュアみたいなカバーを作ることに
している。

それを受け取ったギャラリーの女性オーナーが
最後の微調整をして
私に「どっちがいいですか」のように
打診してきて、決めた最終稿を
印刷屋さんに発注していくれている。

自分の作品で本のカバーができるというのは
なかなか新鮮な体験で
毎年、あたかもその状態で本屋さんに
並んでいるかのような装丁を見ると
わくわくする。

「オリジナルの装丁より
こっちの方がいいわね」なんて
言われようものなら
天にも昇る心地で、
ブックデザイナーの歓びが湧いてくる。

我が家の本棚にはこれまで手掛けた
装丁カバーがかかった小説が
すでに7冊も並んでいるわけで、
そのすべてが自作の版画で出来ているのは
嬉しいものだ。

今年は「板状に咲く」というタイトルの
原田マハ作で
板画家棟方志功が無名時代から
世界のムナカタになるまでを書いた小説だ。

同じ木版画家として
フィクションの部分もあるにせよ
史実に基づいて書かれたその小説は
とても興味深く
この本が出版されて、すぐ、
次回はこれで行こうと思った。

版画家としては
方向性の違う作品だけど、
同じ木版画での表現という意味では
自分の作品がこの本に装丁として
どう見えるか、
本になって出来上がるのが
今から楽しみだ。

来週は秋の団体展のための
カタログ用データの入稿の週で
今年から、Web原稿での入稿しか
認められなくなったので、
何かと不慣れな私には
ハードルが高い。

最も手作り感満載の版画作品も
展覧会に出品するとなると
Webが使いこなせなければ立ち行かない
そんな時代になってしまったわけだ。

中島みゆきじゃないが、
「そんな時代もあったねと~」と
鼻歌交じりにこなせればいいのだが、
今日も新しいHPのブログ投稿の
ノウハウにつまづいて、
何度も何度もLINEして
担当のKさんをイラつかせたに違いない。

版画家のおじいさん達は
私なんかより、
もっともっとWebには弱いので、
きっとあちこちで悲鳴が上がっているだろう。

あと10年したら
なくなっている職業はたくさんあるらしい。
日本の伝統芸術・木版画の
運命やいかに。

そんなことが脳裏をかすめつつ、
装丁のラフ・デザイン一式を
ゆうぱっくでギャラリーに送った。














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