2024年7月21日日曜日

追熟する時間

 











この週末は土曜日は陶芸とカウンセリング、
日曜日は木版の彫りがスタートした。

陶芸の作業は先々週の土曜日に作陶した
8個の湯飲みの削りだった。
木版の彫りがいよいよ始まり、
ここからしばらく真夏の暑い日は
外に出歩く仕事や用事がない時は
家に籠って彫りの作業が続くことになる。

こうした手は動かしているが
頭は考え事ができる作業をしている時、
私は大体、ここ1~2週間の出来事を
思い出しながら、
自分の振り返りの時間にあてている。

7月半ば、
パティシエ学校の非常勤講師の授業が終わった。
終わったと言っても夏休み前の授業の最後で
9月初めの習熟度テストのための対策と
圧迫面接を受けた時、どう受け応えするかを
問題を解きながら解説した。

4つのクラスの内、
内定がとれるか案じていた学生がいるクラスだけ
9月に授業がないことが判っていたので、
そのクラスのクロージングで
「私の授業は、役に立ちましたか」と
訊いてみた。

多くの学生が私の顔を見ながらうなずき、
あっちでもこっちでもアイコンタクトができた。
特に可愛い女子学生のふたりが
両手でハートマークを作って
手を振ってくれたのが嬉しくて、
私もハートを作ってお返しをした。

内定がとれたばかりのM君とS君とも
アイコンタクトしながら
内心、よかったよかったとつぶやいた。

あのシーンは心温まるいいシーンだったなと
彫刻刀を動かしながら思い出した。

彼らにとって
私は「好きな先生」でいられたと思う。

また、先週はやけにカウンセリングの多い週で
1日に4人ものクライエントさんと
セッションする日もあった。

そのひとりひとりと話した時の表情や言葉が
脳裏によみがえる。

熱中症になりかかっても
夕方からなら行けるとやってきた方は
「夏は日中は動けないので、何とかして
夕方、先生にだけ会いに出かけたいので
この先、週一で予約していいですか」と
向こう3回分の予約をしていった。

その方は食欲が全然ないというので、
「スープを作って飲むのはどうかしら」と
「冬瓜スープ」と「ラタトゥイユ」のレシピを
教えたりもした。

また別の方は
何かというと
「40代の頃はこんなこと何でもなかった」と
今の自分を嘆き、
「来週、孫と合うのにちゃんと行けるか心配」と
先の心配ばかりしていたのだが、
いつのまにか
「こう考えれば大丈夫」と今を大切にするように
なっていた。

「今日は一度も、過去に出来ていたことを
今は出来ていないと悔やんだり、
未来の心配を口にしていませんね」というと
一瞬、あっという顔をして
自分で自分に拍手した。
もちろん私も一緒に拍手した。

「私、少し変わりましたよね」と
とても嬉しそうに微笑んだ。

彼女たちにとって
私は「頼もしいカウンセラー」であろう。

他にも
コンサートに一緒に行った友人や
ダンナさんの病が発覚した友人との会話が
思い出され、
彼女たちにとっての私は
どんな役目を持っているのだろうと考えた。

同年代の同性の友人は
同じ年代を生きてきたという共通項があり、
その他に共通の話題があるので、
今も友人として長く続いている。

それは決して、先生でもなければ
カウンセラーでもない位置づけだろう。

最近、会ったり話したりした人は
他にも何人かいるが、
その方達にとっての私は
どんな存在なのか。

認知行動療法では
「重要な他者」という仕分け方で
人間関係を考察することがある。

「その人はあなたにとって
どんな存在ですか?」という問いかけに
答えてもらうという考察なのだが…。

彫りをしながら、
今日もJUJUやサザンをかけていたが、
サザンの歌に「LOVE AFFAIR」という曲が
ある。

その歌の中に
妻子ある男性が好きな若い女性に対して
「ただの男でいたい」という歌詞があり、
今日は妙にその歌詞がひっかかって
頭の中で何度もリフレインした。

人には役割があって
大人になればなるほど、
その役割を遵守しながら日々を暮らすことが
暗黙の了解になっている。

しかし、その役割をうまく果たせない人が
カウンセリングルームには
大勢やってきて
私に「どうしたらいいか」とたずねてくる。

妻や夫として、母親や父親として、娘として
社会人としてなどの大人の役割である。

その中には「ただの男でいたい」とか
「ただの女でいたい」なんてことは
含まれていないのかもしれない。

桑田佳祐自身は
「自分はそうしたことは一度もない」と
言っているが
それでも大人の願望として
誰かの「男としてだけ生きていたい」という
想いが根底にあるから、
この歌が生まれたに違いない。

私も誰かの「女としてだけ生きてみたい」
そんなドロッとした思いが
ないわけではない。

それが非現実的と分かっていても
この曲の歌詞にひっかかるのは
単に猛暑のせいだけではないのだろう。

とりあえず、
冷えた麦茶とリンツのチョコで
ブレイクすることにしよう。





















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